研究領域 | 感染・炎症が加速する発がんスパイラルとその遮断に向けた制がんベクトル変換 |
研究課題/領域番号 |
23114503
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
渋谷 和子 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (00302406)
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キーワード | 炎症 / 発がん / 免疫系受容体 / 免疫監視 |
研究概要 |
DNAM-1はT細胞、NK細胞、マクロファージなどの免疫細胞や血小板に発現する活性化受容体である。これまでに、私達は、T細胞、NK細胞上に発現するDNAM-1が、腫瘍に発現するDNAM-1リガンドCD155と結合して、T細胞やNK細胞に細胞傷害活性を惹起することによって腫瘍免疫監視を行い、メチルコラントレンやDMBAなどの化学発がん物質の単独投与によって誘導される化学発がんを抑制することを明らかにした。一方、本研究において私達は、DMBAとTPAによって誘導される乳頭腫の発生が、予想に反してDNAM-1遺伝子欠損マウスでは有意に抑制されていることを見いだした。この実験系における乳頭腫の発生にはTPAを頻回に塗布することによって惹起される炎症が関与している。すなわち、化学発がんを抑制するDNAM-1が炎症によって惹起される発がんには促進的に働くパラドキシカルな現象が観察された。そこで、誘導性の炎症性発がんだけではなく、他のモデルでもDNAM-1が炎症性発がんに関与しているかどうかを確認するために、炎症性発がんの自然発症モデルであるAPC^<min/+>マウスとDNAM-1遺伝子欠損マウスを交配し、腺腫数を比較検討した。その結果、DNAM-1を欠損したAPC^<min/+>マウスでは、コントロールAPC^<min/+>マウスに比較して、腺腫の数が著明に減少していることが観察された。このことより、DNAM-1が炎症性発がんに促進的に機能していることが強く示唆された。 今後は、他の炎症性発がんの系でもDNAM-1が促進的に関与しているかどうかを確認するとともに、DNAM-1が炎症にどのように関わっているのかについて、in vitroとin vivoの両側面から検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
APC^<min/+>マウスとDNAM-1遺伝子欠損マウスを交配による産仔が予想よりも少数であったため、当初の予想よりも解析に時間を要している。しかし、本領域内での共同研究により、慢性肝炎からの発がんモデルであるMx1-Cre/CN2-29トランスジェニックマウスを用いたDNAM-1の機能解析の計画がすすむなど、当初の計画よりも進展した部分もあり、全体としては、おおむね順調な進展をした。
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今後の研究の推進方策 |
本領域内での共同研究により、他の炎症性発がんの系(慢性肝炎からの発がんモデルであるMx1-Cre/CN2-29トランスジェニックマウスを用いた実験系)においても、DNAM-1が炎症性発がんに促進的に関与しているかどうかを確認する。 また、DNAM-1が炎症にどのように関わっているのかについて、in vitroとin vivoの両側面から検討していく。 さらに、炎症性発がんにおいても、DNAM-1の免疫監視機構は存在するのか、その場合、発がん促進と発がん抑制はどのように拮抗しているのかについても検討する。
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