DNAM-1はT細胞、NK細胞、マクロファージなどの免疫細胞に発現する活性化受容体である。これまでに、私達は、T細胞、NK細胞上に発現するDNAM-1が、腫瘍に発現するDNAM-1リガンドCD155と結合して、T細胞やNK細胞に細胞傷害活性を惹起することによって腫瘍免疫監視を行い、メチルコラントレンやDMBAなどの化学発がん物質の単独投与によって誘導される化学発がんを抑制することを明らかにした。一方、私達は、DMBAとTPAによって誘導される乳頭腫の発生が、予想に反してDNAM-1遺伝子欠損マウスでは有意に抑制されていることを見いだした。2つの実験系の違いは、後者の実験系における乳頭腫の発生にはTPAを頻回に塗布することによって惹起される炎症が関与していることである。このことから、化学発がんを抑制するDNAM-1が、炎症によって惹起される発がんには促進的に働くパラドキシカルな機能を有していることが示唆された。そこで、DNAM-1の炎症における役割を検討するために、野生型マウスとDNAM-1遺伝子欠損マウスの背部の皮膚にTPAを塗布して比較観察した。その結果、DNAM-1遺伝子欠損マウスの皮膚では、TPAによって惹起されるケラチノサイトの増殖や真皮への細胞浸潤が、野生型マウスに比較して軽減していることが観察された。さらに、局所のTNF-aやIL-6などの炎症性サイトカインの産生も低下しており、DNAM-1が炎症反応に重要な役割を担っていることが示された。 今後は、ウイルス感染等によって惹起される炎症を伴う感染がんにおいて、DNAM-1がどのように関わっているのか解析する必要がある。
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