腸管は極めて多数の微生物と常に接していることから、微生物との強い相互作用を介して恒常性が維持されている。そのため、大腸がん発症においては、これら微生物の影響を強く受けることが知られているが、詳細については未だ不明である。申請者はこれまで、家族性大腸腺腫症のモデル動物であるApcMinマウスを用いた解析から、IL-17A/IL-17Fが腸管ポリープ形成に促進的な役割を担っていることを見いだしている。一方、微生物センサーであるToll様受容体(TLR)を介した腸内細菌との相互作用が腸管ポリープ形成に影響を及ぼすことが報告されているが、TLRとは異なる特性を持つ微生物センサーであるC型レクチン受容体(CLR)についてはほとんど解析がなされていなかった。 そこで本研究では、「感染-炎症-がん」の関係について、「腸内細菌-CLR-IL17-ポリープ形成」軸に焦点を当て解析を行った。CLRの中でも特にDectin-1に注目し、ApcMin Dectin-1 KOマウスを作出したところ、TLR欠損の場合とは異なり、予想に反してDectin-1欠損が欠損すると腸管ポリープ形成が増悪化することがわかった。このことは当初想定した「腸内細菌-CLR (Dectin-1) -IL17-ポリープ形成」が単純には当てはまらないことを示しており、Dectin-1を介したシグナルは炎症抑制に関与することが示唆された。 連携研究者:岩倉洋一郎、唐 策(東京理科大学・生命医科学研究所)、樋口京一(信州大学・医学系研究科)、松本清司(同・ヒト環境科学研究支援センター)
|