公募研究
胃がんや大腸がんは、その発症において感染細菌や常在細菌と宿主の相互作用が重要である。一方、NLR蛋白は、細胞膜のTLR蛋白と同様に、病原微生物を認識し、炎症応答を惹起する細胞質センサーである。我々は、自ら発見したNLR蛋白のPYNODが炎症応答を阻害することを示してきた。すなわち、PYNODは抑制型のNLR蛋白であり、胃がんや大腸がんの発症にも影響を与える可能性がある。PYNODの生理的、病理的役割を明らかにするために、PYNOD欠損マウスを樹立し、解析を行ってきた。PYNOD欠損マウスから調整したマクロファージについて自然免疫系の反応性を調べたところ、炎症性サイトカインの産生は正常であった。また、高濃度のLPS投与によるエンドトキシンショック誘導実験についても、野性型と比較して生存率や血清中のサイトカイン濃度について、明らかな差は認められなかった。しかしT細胞依存性遅延型過敏性応答のマウスモデルであるトリニトロクロロベンゼン(TNCB)接触過敏性応答を検討したところ、PYNOD欠損マウスの獲得免疫応答が野性型と比較し著しく低下していることが判明した。胃がんの発生においては、Wntシグナル亢進およびプロスタグランディンE2 産生が重要と考えられている。これら双方のシグナルを活性化したマウスモデルでは高頻度に胃がんの発生が認められる。我々はこのモデルにおいてPYNODの発現が著明に上昇していることを発見し、このマウスとPYNOD欠損マウスおよびPYNODトランスジェニックマウスとの交配を行い、さらなる遺伝子改変マウスを作製したが、現在もなお解析の途中段階にある。さらに、ヒト胃がん患者のサンプルについてヒトPYNODの発現を定量PCRで検討したところ、papillary型の胃がんについて、約50%の症例でPYNODの発現が、腫瘍部位で上昇しているという結果を得た。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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