研究領域 | 感染・炎症が加速する発がんスパイラルとその遮断に向けた制がんベクトル変換 |
研究課題/領域番号 |
23114506
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
橋田 充 京都大学, 薬学研究科, 教授 (20135594)
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キーワード | 腫瘍関連マクロファージ / NF-κB / リポソーム / 超音波 / 癌治療 / 血管新生 |
研究概要 |
本研究の目的は、腫瘍関連マクロファージを標的としたオリゴ核酸医薬の送達法の開発である。本年度は、腫瘍関連マクロファージの機能制御を目的として、細胞内NF-κB活性の抑制に基づく腫瘍関連マクロファージのM2型からM1型への分化誘導について評価を行った。まず、評価に先立ちin-vitro実験系のデザインを行った。マウス腹腔マクロファージを癌細胞(Colon26結腸癌細胞)培養上清を用いて培養することにより、マクロファージより産生されるサイトカインがTh1型(IL-12、IL-6、TNF-a)からTh2型(IL-10)ヘシブトすることが確認された。本手法によりM2型マクロファージをin-vitroにおいて再現することが可能となった。続いて、本実験系を用いてNF-kB活性抑制後のマクロファージの分化型について評価を行った。NF-κBに対するsiRNAをM2型マクロファージ内へ導入し,その後マクロファージより産生されるサイトカインの種類、量を評価した結果、M1型に類似したサイトカイン産生プロファイルを示すことが明らかとなった。また、癌の血管新生、転移において中心的な役割を担う血管新生促進因子(VEGF)並びにマトリックスメタロプロテアーゼはM2型マクロファージから優位に産生されるが、VEGF産生量及びマトリックスメタロプロテアーゼmRNA量は、M2型マクロファージ中のNF-κB活性を抑制することで顕著に減少することが示された。以上の結果は、マクロファージ中のNF-κB活性を抑制することにより腫瘍関連マクロファージの分化型をM2型からM1型へ再誘導できることを示唆するものである。本技術は、腫瘍関連マクロファージの腫瘍増殖、血管新生及び転移促進作用を抑制するのみならず、M1型マクロファージへ再分化させることにより、その免疫活性化能、抗腫瘍性サイトカイン産生能に基づく抗腫瘍活性により効率的な癌治療が達成可能である画期的な治療法と成り得ると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、腫瘍関連マクロファージをM1型マクロファージへ再分化誘導することが可能であることをin-vitroにおいて見出し、この成果はin-vivoにおいて高い治療効果を発揮する癌治療法の構築に大きく貢献するものであると考えられる。引き続きて腫瘍関連マクロファージ特異的なキャリアーの開発を中心に、研究を推進する。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に確立した技術を担癌モデルマウスを用いたin vivo実験へスケールアップするために、腫瘍関連マクロファージ選択的なドラッグデリバリーが達成可能なキャリアーの開発を行う。当研究室では糖修飾バブルリポソームを開発し、マクロファージ選択的かつ高効率な拡散送達法の構築に成功している。本システムを基盤として、その物理化学的性質並びに超音波照射条件等を最適化することにより、腫瘍組織への効率的な移行性とマクロファージ選択性を併せ持ったキャリアーを開発することが可能であると考えている。また、開発したキャリアーを利用して、in-vivoにおける腫瘍関連マクロファージのM1型再分化の評価、並びに癌治療効果についても評価を行う。
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