公募研究
1)昨年度に作成した臓器特異的に発現可能なErb2トランスジェニックマウスにおいて、胃におけるErb2発現を行うため、Foxa3-creと交配した。胃は過形成が起こったが、同時に膵臓にも異常が生じ、短命となった。そこで、エストロゲン投与で発現可能なCK19-creERマウスとの交配を開始した。2)胃組織幹細胞培養をマトリゲルを用いて確立した。MNU投与マウスより、幹細胞を分離培養し、免疫不全マウスに移植を行った。3)腫瘍微小環境において重要なサイトカインであると考えられているIL-6についての発癌に対する働きを解析した。IL-6ノックアウトを用いてMNUによる胃発癌への影響を観察すると、腫瘍発生が明らかに減少した。IL-6は腫瘍内において主に線維芽細胞に発現しており、胃癌細胞に対してSTAT3を活性化することにより、腫瘍増殖に関与することが明らかとなった。4)IRF1はインターフェロンを初めとするサイトカインによって誘導される転写因子であり、癌抑制遺伝子の働きをすると考えられている。今回、IRFI-/-マウスを用いてHelicobacter felis感染による炎症、発癌への関与を検討した。その結果、ノックアウトマウスでは野生型マウスに比較し、炎症および前がん病変である腸上皮化生性変化が強く観察された。また、癌幹細胞のマーカーであるCD44の発現も増加しており、発癌が亢進する可能性が示唆された。
3: やや遅れている
臨床検体を用いた解析は、検体を収集が遅滞し、未だ行なえていない。また、動物の繁殖状態にやや難がある。
発癌モデルはやや遅延しているものの、着実に進捗しつつあり、次年度に期待出来る。胃幹細胞培養は新たな領域であり、当研究室で確立するまでに6カ月を要した。今後、遺伝子発現や抑制系の確立や、長期培養などを中心に確立していく。癌幹細胞の同定を目指して、動物モデルと培養を組み合わせた解析を続ける。腫瘍微小環境におけるさまざまな細胞の働きをさらに詳細に解析し、その悪性化メカニズムの解析を進める。
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