研究概要 |
ヒト正常角化細胞を用いたin vitro多段階発がんモデルの解析を先行した。E6,E7,c-MYC,活性型RASの4因子をヒト正常子宮頸部角化細胞(HCK)に導入すると高率にiCSCが出現しがん原性を獲得することを観察していた。この時、MYC導入の有無により足場非依存性増殖や造腫瘍性が著しく更新することからMYCががん幹細胞性の誘導と維持に重要であると考えた。しかし、E6,E7,活性型RASの3因子の導入によって得られた細胞も200個移植すると腫瘍を形成した。この際、活性型RASの導入によりMYCのリン酸化と安定化がもたらされていることが確認された。そこで、この細胞にMYCのドミナントネガティブ体として働くOmoMYCをテトラサイクリン誘導系にて発現誘導すると、造腫瘍性が著しく低下することが確認された。また、MYCに対するsiRNAテトラサイクリン誘導系にて発現誘導した時も同様に造腫瘍性低下が観察された。次いでE6,E7,活性型RASの3因子の導入によって得られた細胞にテトラサイクリン誘導系にてMYCを発現誘導する細胞を樹立した。MYCの発現誘導により造腫瘍性の増加を期待したが、結果はどちらも腫瘍を形成し有意差は得られなかった。MYCの高発現はiCSCの形成、維持に重要であるが、一定レベルの閾値を超えれば十分である可能性が示唆された。OmoMYCまたはsiRNAによってMYCの活性をその閾値以下にすることによってがん幹細胞性を失わせることができることが示唆される。また、同様の実験を舌角化細胞を用いても確認することができた。一方、de novo子宮頸がん発がんモデルの作出の計画は遅れているが、安全なウイルスベクターの調製に成功したため2年次に重点的に実験を進める。
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