研究概要 |
本研究では(1)LMP遺伝子発現調節機構と(2)EBV潜伏感染からの再活性化の分子機構の解明を目的としている. (1)潜伏感染LMP1遺伝子の発現を調節する因子の同定:LMP1遺伝子の転写を制御する宿主因子を網羅的に同定するために、cDNA発現ライブラリーを用いたスクリーニングを遂行し、LMP1プロモーターを活性化する宿主因子の探索を行った。これまでに2万個以上のクローンを精査した結果、新規転写因子としてC/EBPεを同定した。C/EBPα,β,γ,ε,ζのうちC/EBPα,β,εが特に強力にLMP1プロモーターを活性化することを明らかにした。また、LMP1には近位(ED-L1)、遠位(TR-L1)の二つのプロモーターが存在するが、近位のプロモーター上の特定部位にC/EBPが結合することで近位と遠位の両プロモーターを活性化することが分かった。C/EBP結合部位に変異を加えた組換えウイルスではLMP1の発現量が減少し、さらに、shRNAを用いてC/EBPをノックダウンさせると、LMP1タンパク質の発現量が減少することが分かった。 LMP1の発現を制御する薬剤探索ではHSP90の阻害剤がLMP1の発現を減少させることを見いだした。 (2)EBV潜伏感染からの再活性化に関与する転写因子の同定:潜伏感染からウイルス産生感染への切替えに必須なBZLF1遺伝子の転写を制御する宿主因子を網羅的に同定するために、cDNA発現ライブラリーを用いたスクリーニングを遂行した。その中でb-Zip型転写抑制因子c-Jun dimerization protein 2(JDP2)が、BZLF1プロモーターに結合し、BZLF1の転写を抑制することでウイルスの再活性化を抑制し、潜伏感染の維持に貢献していることを見いだした。JDP2を過剰発現するとEBウイルス再活性化は抑制され、逆にsiRNAによりJDP2をノックダウンすると再活性化が促進された。JDP2はBZLF1プロモーター上のZIIと呼ばれるシスエレメントに結合し、ヒストン脱アセチル化酵素のひとつであるHDAC3をプロモーター上にリクルートすることでBZLF1の発現を抑制していることを確認した。
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