研究実績の概要 |
本研究ではEBV陽性がん細胞維持に重要なLMP1及びBZLF1の遺伝子発現機構を明らかにすることを目的とした。 (1)潜伏感染II型におけるLMP1遺伝子の発現を調節する因子の同定:潜伏感染II型におけるウイルス癌遺伝子LMP1の発現の分子機構の一端を明らかにした。LMP1遺伝子の転写を制御する宿主因子を網羅的に同定するために、cDNA発現ライブラリーを用いたスクリーニングを遂行し、新規転写因子としてC/EBPεを同定した。LMP1には近位(ED-L1)、遠位(TR-L1)の二つのプロモーターが存在するが、近位のプロモーター上の特定部位にC/EBPが結合することで近位と遠位の両プロモーターを活性化することが分かった。C/EBP結合部位に変異を加えた組換えウイルスではLMP1の発現量が減少し、さらに、shRNAを用いてC/EBPをノックダウンさせると、LMP1タンパク質の発現量が減少することが分かった。 (2)EBV潜伏感染の維持に関与する転写因子の同定: BZLF1プロモターの発現制御がEBVの潜伏感染の維持とウイルス産生感染への再活性化の鍵を握っている。BZLF1プロモター(Zp)を活性化する新規宿主転写因子を同定する為に cDNA発現ライブラリーを用いたスクリーニングを遂行し、MEF2B, KLF、b-zip因子等を見いだしている。これらの結合部位に変異を導入した組替えEBV BACDNAをそれぞれ作成し、HEK293細胞にトランスフェクションすることによりそれぞれの組替えEBウイルスが潜伏感染する細胞株を樹立した。b-zip因子の結合部位に変異を持つEBV潜伏感染細胞ではBZLF1の発現量が顕著に低下したが、KLFの結合部位変異株ではあまり影響しなかった。MEF2の結合部位変異株ではBZLF1の発現量は顕著に低下した。
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