研究領域 | 遺伝情報収納・発現・継承の時空間場 |
研究課題/領域番号 |
23114702
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
原田 昌彦 東北大学, 大学院・農学研究科, 准教授 (70218642)
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キーワード | 細胞核 / アクチン関連タンパク質 / クロマチン / 遺伝子発現 / DNA修復 / アクチンファミリー |
研究概要 |
細胞核は、高度に組織化・区画化されたダイナミックな構造体である。クロマチンの構造に加え、核内空間への収納が遺伝情報の発現制御・維持継承における重要な分子基盤であり、発生・分化・疾病に伴い核内構造も変化する。しかし、核構造形成(クロマチン機能場、染色体テリトリー、クロマチン空間配置、核内構造体など)の基本原理やメカニズムには不明な点が多いことから、本研究では、Arp6がH2A.Z導入を介してクロマチン機能場形成に果たす役割について、主に解析を行った。H2A.Zのアイソフォーム(H2A.Z-1およびH2A.Z-2)のノックアウト細胞を用いて、核内のクロマチン空間配置を3D-FISH法によって解析したところ、これらの細胞でクロマチン空間配置の異常が観察された。同様の異常は、Arp6ノックアウト細胞でも観察されたことから、Arp6によるH2A.Zのヌクレオソームへの導入が、核内のクロマチン空間配置に重要な役割を果たすことが示された。H2A.Z-1とH2A.Z-2の比較では、H2A.Z-2がクロマチン空間配置への影響が大きいことも示された。このことは、H2A.Z-2の進化的保存性が高いことと関連がある可能性がある。また、これらの細胞における遺伝子発現の変化をマイクロアレイ法で解析したところ、クロマチン空間配置自体には、遺伝子の発現レベルを大きく変化させる機能はないことが示唆された。また、卵細胞の発生やES細胞分化におけるArp6やH2A.Zの発現や局在の変化を、連携研究者、三谷匡の協力を得て解析した。その結果、卵細胞の発生の過程で、Arp6やH2A.Zの発現が大きく変化することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
細胞核内のアクチン関連タンパク質Arp6、および進化的に保存性の高いヒストンバリアントであるH2A.Zが、クロマチンの核内空間配置に必要であることを初めて明らかにした。これらの結果を、Journal of Cell Science誌およびNucleus誌で公表した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、他の核内AfPが細胞核構築にどのように関与するかを明らかにする。すでに、ヒト培養細胞を用いて、Arp5あるいはArp8をノックアウトした細胞株を樹立しおり、これらの細胞を用いて3D-FISH解析を行うことにより、染色体テリトリーや核内構造体などを検出し、これらのArpが核内部の構造構築や、クロマチン空間配置に関与するかどうかを明らかにする。また、細胞分化に伴う核構造の「時系列」変化における核内ArpおよびH2A.Zの機能解析を行う。ES細胞や卵細胞を用いて、これらのタンパク質と初期発生との関与を解析する。これらの細胞で核内ArpやH2A.Zをノックダウンして発生能や遺伝子空間配置の変化を解析する。さらに、これらの細胞におけるクロマチンのダイナミクスについても解析を行う。
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