生物のゲノム機能に重要なエピジェネティック制御には、クロマチンの構造に加え、核内空間へのゲノムの収納が重要な役割を果たしている。しかし、核構造形成の基本原理や分子メカニズムには不明な点が多い。我々は、細胞核に局在するアクチン関連タンパク質(Arp)の存在を見出し、これらの核内Arpがクロマチンレベルおよび細胞核レベルで、核内時空間場の制御に重要な役割を果たすことを示した。また、核内のArp6が、ヒストンバリアントH2A.Zのクロマチン導入に関与しているほか、ミオシンファミリー分子とも相互作用することも見出した。本研究では、核内部の「空間」の構築と、分化に伴う細胞核の「時系列」変化において、核内のアクチン関連タンパク質が、これらの核内タンパク質と共に、どのように機能しているかをさらに解析した。その結果、Arp6が細胞核内のクロマチン空間配置に関与することを明らかにした。また、Arp5およびArp8をノックアウトした細胞株を作成して解析することにより、これらのアクチン関連タンパク質がゲノム安定性維持に関与することや、細胞のストレスに応答した遺伝子発現制御に関与することなどを見出した。さらに、H2A.Zをノックアウトした細胞株を作成し、H2A.Zが核内のクロマチン空間配置に関与することも明らかにした。このような機能の他にも、H2A.Zが環境に応答して遺伝子発現が変化する多くの遺伝子領域に取り込まれており、これらの遺伝子発現制御に広く関与していることを見出した。
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