公募研究
核小体は、従来リボソームRNAの転写とリボソーム合成の場として知られていたが、近年の研究から、核小体がM期を始めとした細胞周期の制御にも関与することが知られつつある。本研究では、核小体因子による分裂期(M期)染色体動態の制御機構を解析した。まず、M期進行に関与する核小体タンパク質を同定するために、約600種類の核小体タンパク質に対するsiRNAライブラリーを作製し、HeLa細胞にトランスフェクションしたところ、そのうち約60種類がM期の進行を遅延させた。さらにその60種類の因子のうち機能が未知で最もM期細胞割合を増加させたnucleolar protein 11(NOL11)に着目して解析を進めた。NOL11は間期では核小体に、M期にはM期染色体の周辺に局在した。また、siRNAによりNOL11をノックダウンしたところ、M期の細胞の割合が約2倍に増加し、M期細胞では中期までの細胞の割合が増加した。M期中期の染色体を観察したところ、NOL11ノックダウンにより、細胞赤道面上での染色体の整列が著しく阻害された。また、姉妹染色分体間のコヒージョン(接着)も減弱した。そこで、染色体の整列や姉妹染色分体間の接着に関与するM期キナーゼ、Aurora Bの挙動を解析したところ、NOLI1ノックダウンにより、Aurora Bのキネトコア局在が消失した。また、Aurora Bの局在の足場になるヒストンH3のThr3残基のリン酸化(H3T3ph)を調べたところ、キネトコアのH3T3phが減弱した。これらの結果から、核小体因子NOL11はH3T3phのキネトコア局在を介して、Aurora Bをキネトコアにリクルートすることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
初年度には、rRNAによる染色体動態の制御、及びrRNAによる核小体タンパク質の制御を解析する予定であった。rRNAによる染色体動態の制御に関しては、ツメガエルの系でrRNAが染色体の整列に重要な役割を果たしていることを見出し、培養細胞の系ではrRNAが染色体の周辺に局在することを見出した。rRNAによる核小体タンパク質の制御に関しては、rRNAがNOL11をはじめとする核小体タンパク質が染色体に結合する足場として機能することを見出した。また、その論文を投稿中である。従って、研究はおおむね順調に進展していると考える。
現在まで、研究は当初の予定の通り順調に進展している。従って、今後の研究に関しても研究計画に従って進めていく予定である。すまわち、rRNAによる染色体動態の制御に関しては、rRNAがいかに染色体の整列に機能するかをAurora Bの制御を含めて検討する。rRNAによる核小体タンパク質の制御に関しては、rRNAによるNOL11の制御を中心に研究を展開する。また、rRNAの染色体結合のメカニズムの解析に関しては、まずrRNAの結合部位を決定し、それに関わる因子の同定を中心に研究したい。また、現在投稿中の論文をアクセプトさせることを目標にしたい。
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