研究領域 | 遺伝情報収納・発現・継承の時空間場 |
研究課題/領域番号 |
23114706
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中馬 新一郎 京都大学, 再生医科学研究所, 准教授 (20378889)
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キーワード | 生殖細胞 / 減数分裂 / シグナル伝達 / ゲノム / 発生 |
研究概要 |
生殖細胞は遺伝情報を次世代に伝達し個体発生の起点となる細胞系譜である。生殖細胞ゲノムの安定な保持と伝達は個体、種の継続に重要であると共に、減数分裂による相同遺伝子組換えと1倍体化によって遺伝情報の多様性が生まれる。減数分裂の制御機構の研究は主に酵母等の単細胞生物を用いて行われる一方、多細胞生物においてその分子基盤の解明は進んでいない。研究代表者はマウス生殖幹細胞株が体細胞型増殖から第1減数分裂前期(レプトテン・ザイゴテン期)に同調して移行する培養実験条件を作出した。同実験系は哺乳類減数分裂開始のスイッチ機構とそれに伴う核動態やシグナル伝達を解析する為の非常に有用な実験系となる。平成23年度はクロマチン免疫沈降と,次世代シークエンスを用い生殖幹細胞および初期減数分裂のヒストン修飾、RNAポリメラーゼ、核内レセプター/転写因子の解析を行い、エピゲノム制御、転写制御についてゲノムワイドな網羅的データを取得した。またマイクロアレイを用いたRNA発現解析、nanoLC-MS/MSを用いたoffline-mudpitによるショットガン質量分析により核動態の変化について包括的プロテオームデータの取得を進めた。これらの結果は哺乳類生殖細胞の体細胞型分裂-減数分裂移行を制御するシグナル経路と核動態転換の連携、また哺乳類減数分裂の初期過程における分子メカニズム解明の基盤となる重要な研究成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度はマウス生殖幹細胞株の初期減数分裂誘導の培養実験系を用いてマイクロアレイ、次世代型シークエンス、質量分析等を用いたマルチオミクス解析により、ゲノムワイドな転写制御、エピゲノム制御および核動態について網羅的なdata driven型研究の基盤となる成果を得る事が出来た。これらの結果は当初の研究計画に沿って大凡順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
マウス生殖幹細胞株、初期減数分裂のマルチオミクス解析を継続すると共に、核動態とシグナル経路のクロストークについてデータマイニングを進める。得られた機能候補分子について発現制御や局在、複合体構成や生化学的活性の検出、遺伝子学的機能の解析を進め、哺乳類減数分裂の初期過程における分子ネットワークの解明を目指す。
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