研究領域 | 遺伝情報収納・発現・継承の時空間場 |
研究課題/領域番号 |
23114708
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
檜枝 美紀 大阪大学, 医学系研究科, 特任助教(常勤) (00380254)
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キーワード | 核膜 / LINC complex / 細胞遊走 / ゴルジ構造 |
研究概要 |
私達は、ある刺激に応答して、クロマチン構造変化と細胞運動能の亢進が同調しておこること、また、あるクロマチン構造変化を誘導することにより細胞運動能が亢進すること、また逆に、そのクロマチン構造変化を阻害することにより、細胞運動能が抑制することを見出してきた。これらの結果は、グローバルなクロマチン構造変化が細胞運動を調節している可能性を示していると考えられる。そこで、クロマチン構造に応答した、細胞運動能の調節機構を分子レベルで解明することを目的として、本研究を行った。 クロマチンの構造変化等、核内の状態(nuclear status)による細胞運動調節機構を明らかにするため、本年度はnuclear statusを細胞質へ伝える分子の探索を行った。その結果、核膜タンパク質SUNおよびnesprinからなるLINC complexがその候補因子であることを見出した。また、LINC complexに結合するゴルジ体関連タンパク質も見出した。これらの結果は、これまで、細胞質の情報を核内に伝達すると考えられていた、LINC complexが、クロマチンシグナリングを細胞質に伝えていることを示唆しており、非常に興味深いものである。 さらにその調節を可能にする核膜の分子基盤を明らかにするため、核膜構築の分子基盤の解明に取り組んだ。Tail-anchored proteinであると予想されている核膜内膜タンパク質lap2βに着目して、翻訳からER膜挿入・核膜への局在化の分子メカニズムを明らかにするための、アッセイ系を構築した。そして、解析を進めたところ、lap2βの核膜局在化には、可溶性因子およびATPが必要であることがわかった。またこれまでの核移行経路とは異なりWGAによる阻害効果が低いことも明らかになった。今後、可溶性因子の同定を行い、lap2βの核膜局在化機構を明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
難航が予想されたLINC complexとゴルジ体構造を結ぶ因子の同定も行うことができ、研究目的にのべたことに関しては、ほぼ達成できたため。
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今後の研究の推進方策 |
(1)LINC complexとゴルジ体との結びつきをさらに詳細に解析する。また(2)LINC complexとクロマチンとの結合について、分子レベルで明らかにする。 これらの2点から、クロマチンシグナリングがどのように細胞運動を調節にするのか、明かにしていく。
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