研究概要 |
1.アクチンフィラメントの脱重合に伴う接着細胞と細胞核の形態変化の計測 遺伝子導入によりアクチンフィラメントと細胞核を蛍光標識した線維芽細胞を24時間培養し,共焦点レーザ顕微鏡を用いてアクチンフィラメントと細胞核の三次元蛍光画像を取得した。次に,アクチンフィラメントの脱重合剤であるサイトカラシンDを投与してから,経時的に同様に三次元蛍光画像を取得した。アクチンフィラメントの脱重合が進むにつれて細胞核の形態が扁平からいびつな山形に変化するとともに表面に皺が形成された。細胞核の表面積と体積は減少する傾向を示した。細胞の高さは1.8倍に増加したが,細胞核の高さ変化は1.3倍に留まっており,細胞核は自身に作用する応力に応じて核骨格構造を適応的に変化させることが強く示唆された。 2.細胞用引張試験装置の構築 現有の共焦点レーザ顕微鏡に,恒温チャンバー,マイクロマニピュレータ,画像記録・計測装置,および購入した三次元電動マイクロマニピュレータ等を組み込んで,顕微鏡ステージ上で細胞核サイズの試料の引張/圧縮試験を行えるようにした。試料は,マイクロマニピュレータにそれぞれ固定された微細ガラスマイクロプレートとマイクロピペット/マイクロプレートの間に細胞を把持し,ピペット/マイクロプレートを電動マイクロマニピュレータで移動させて細胞に引張/圧縮負荷を与える。線維芽細胞および線維芽細胞から単離した細胞核の圧縮試験を行って装置の性能を評価し,圧縮試験が可能であることを確認した。みかけの弾性係数を求めたところ,細胞核の方が細胞よりも約3倍大きい値であった。操作性改善および振動ノイズ低減により信頼性を向上させ,単離細胞核格納装置の導入を完了すれば,同一細胞において細胞と細胞核の力学試験が可能となり,細胞内力学場解明のための強力なツールとなる。
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今後の研究の推進方策 |
早急に細胞用引張試験装置を完成させる。細胞と細胞核の引張/圧縮試験を,無処理の細胞,アクチンフィラメントを脱重合させた細胞,核骨格のノックダウンを行った細胞について行い,アクチンフィラメントと核骨格が細胞核の形態と力学的特性に及ぼす影響を定量的に評価する。また,故障している局所的力学計測装置の修理を行うが,修理が困難である可能性があるため,その場合には,別の方法により局所力学計測を行い,引張/圧縮試験結果と合わせてデータ解析を行う。
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