研究領域 | 遺伝情報収納・発現・継承の時空間場 |
研究課題/領域番号 |
23114714
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
滝沢 琢己 群馬大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (30531115)
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キーワード | ニューロン / 転写制御 / 核構造 |
研究概要 |
マウス海馬ニューロンの培養系を用いて、in vitroにおけるニューロン成熟過程での遺伝子発現制御機構を、細胞核内における遺伝子座の空間配置という観点から検討した。本年度は、まずマウス海馬より調製したニューロンから培養開始後0.5日目、4日目、10日目にRNAを抽出し、連携研究者である五十嵐らにより網羅的遺伝子発現解析を施行した。その結果成熟に伴い遺伝子発現プログラムが大きく変化することが分かった。これを裏付けるように、IPAによるパスウェイ解析では0.5日目では炎症に関連する遺伝子群の発現が主体であったものが、4日目にはGABA受容体に関連する遺伝子群、10日目にはアクソン伸長、cAMP関連、グルタミン酸受容体などニューロンの機能に関連する多くの遺伝子群の発現が増加していた。現在、発現が増加する遺伝子群のうち特定のゲノム領域に集族しているものがないか検討中である。特定の領域に集族している遺伝子群があった場合、その領域の核内での位置と転写活性の関連を検討する予定である。一方、これらの遺伝子群のうちニューロン以外の細胞でのニューロン特異的遺伝子の発現を抑制することが知られる転写抑制因子RESTの標的遺伝子Cdk5r2、Scn2a1、Syn3、Stmn2、Kcc2に着目し、それらの発現と遺伝子座の核内配置を検討した。これらの遺伝子群の発現はニューロンの成熟に伴って大きく増加していた。また、核膜への局在を指標にこれら遺伝子座の核内配置をDNAFISHにて検討したところ、Cdk5r2とScn2a遺伝子座の位置が、未成熟のニューロンでは40-50%核膜に局在しているのに対し、成熟ニューロンでは約10%と減少していた。すなわち、遺伝子発現に伴い、遺伝子座が核の内方へ移動していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では、現象を記述する研究は初年度に終え、二年目にはその分子基盤にアプローチするための研究を開始する予定であったが、DNA FISHによる解析が難航し、現象論の記述にとどまっている。2年目には、なるべく早くメカニズムに迫る研究を開始したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
RESTの標的遺伝子に関しては、RESTをノックダウンすることにより、より早期に遺伝子発現を誘導した場合、または強制発現により標的遺伝子の発現時期を遅らせた場合に、遺伝子座配置の変化がどう影響を受けるかを検討したい。また、特定のゲノム領域にニューロン成熟に依存して発現が変動する遺伝子が集族している場合、その領域の各内での配置を詳細に検討する。核内での位置変動が確認された場合は、その近傍にLacO配列を挿入したES細胞を作成し、まずそのES細胞からニューロンを分化誘導させ、LacO配列を有する領域の核内での位置を時間経過を追って検討したい。また、これは本研究計画内で実行することは難しいが、例えば、核膜に局在するタンパク質とLacリプレッサーの融合タンパク質を発現させて、LacO配列を核膜に繋留した際に、集族遺伝子やニューロンの成熟そのものが受ける過程を検討したい。
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