<研究の目的> 遺伝子発現機構に存在するゆらぎや変異などは、遺伝情報が機能(蛋白質)へと正確に結びつくことを邪魔する。一般的にロバストな生命のシステムには、情報場への摂動が機能に直接影響を与えないようにするための緩衝作用が多数存在していると考えられる。しかし、このような緩衝機構は、これまでは個別研究の偶然による発見を待つほかなかった。申請者らが開発した遺伝子綱引き法(gTOW)は、遺伝子コピーを上昇させることにより情報場に摂動を与える。遺伝子コピー数の上昇が、蛋白質の量に反映されない場合、そこにはなんらかの緩衝機構が存在していることが示唆される。そこで本研究では、分裂酵母と出芽酵母の細胞周期制御遺伝子のコピー数が変動したとき、それが生命システムによってどのように緩衝されているのかを、gTOWを中心とする測定実験により明らかにすることを目的とする。 <研究実施計画> 本研究では、申請者らが開発した遺伝子綱引き法(gTOW)を中心とした測定実験を用いて以下のような実験をすすめる。1.遺伝子のクローニング、2.蛋白質のウエスタンブロティングによる定量、3.蛍光蛋白質もちいたプラスミドコピー数と蛋白質量の相関解析、4.緩衝機構の同定と検証、5.数理モデルとして統合。 本年度は、上記測定結果とその結果を組み入れた分裂酵母細胞周期の数理モデリングを行なった論文を発表した。現在、さらに測定を進め緩衝機構の予測を行なっている。
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