研究領域 | 遺伝情報収納・発現・継承の時空間場 |
研究課題/領域番号 |
23114718
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大川 恭行 九州大学, 医学研究院, 准教授 (80448430)
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キーワード | 高次クロマチン構造 / 次世代シークエンサー / 骨格筋分化 / クロマチン |
研究概要 |
遺伝子群全体の制御の引き金となる"遺伝子座近接現象(ジーンクラスタリング)"に特化して、骨格筋分化の各段階での遺伝子座近接現象の解明を試みた。まず、3C-seq法を改変し更に広範なゲノム領域の解析なロングリード型の変法を開発した。本法を用いて遺伝子座の空間的近接の時間軸、空間軸の両面から解析を行った。その結果、前駆細胞が、細胞分裂を繰り返す未分化段階で、既に骨格筋遺伝子座が集積していること、また集積した遺伝子座の発現が一過的に抑制されることを明らかにした。この集積領域にはBrg1をはじめとする従来、遺伝子の発現転写活性化に関わるクロマチンリモデリング因子と共に、ヒストン脱アセチル酵素をはじめとする遺伝子発現に抑制的に機能する分子群が同時にリクルートされていることを見出した。抑制型と活性型分子が同時に遺伝子の制御領域にリクルートされる現象は、未分化状態で一過的に起こっており分化後期ではこれら抑制性複合体のリクルートメントの消失と共に遺伝子集積も検出されない。一方で、この集積現象では、MyoDを線維芽細胞に強制発現さぜる分化誘導では、骨格筋組織形成同様に観察されるのに対して、分化が急激に起こる惹起されるMyogenin/Mef2D1bの強制発現による分化誘導系では、遺伝子集積現象の蓄積は確認されなかった。従って、遺伝子集積現象は、一過的な遺伝子発現抑制効果に伴い形成されることが明らかとなった。以上より、細胞分化での一過的な遺伝子発現抑制は、空間的な遺伝子座の再配置により抑制的な制御を受けており、細胞分化時に秩序だった遺伝子発現の誘導を行う上で重要な役割を果たしていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
分化遺伝子選択にかかわる制御機構としてジーンクラスタリングを明らかにし、さらにその制御メカニズムまでの解析に到達し、さらに関与因子としてBrg1をはじめとする分子の同定を達成した。当初予定を大幅に上回る解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
マウス胚のような微量解析を可能では、解析が今後遅れる可能性があるため、さらなる技術開発を同時に進めている。
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