研究領域 | 遺伝情報収納・発現・継承の時空間場 |
研究課題/領域番号 |
23114720
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
田上 英明 名古屋市立大学, 大学院・システム自然科学研究科, 准教授 (70273216)
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キーワード | ヒストンシャペロン / ヒストン複合体 / Mlo2(HiTAP1) / H3/H4解離活性 |
研究概要 |
可塑的かつダイナミックなクロマチン高次構造制御の理解は、ゲノムおよびエピゲノム情報の維持、変換の分子基盤となると考えられる。本研究は、新規ヒストンH3結合因子Mlo2(HiTAP1)によるヌクレオソーム制御システムに焦点を当て、その分子メカニズムを解明するとともに、遺伝情報の時空間場としての細胞核と細胞機能の共役システムの解明を目指したものである。平成23年度において、HiTAP1の分子機能解析を進め、以下のことを明らかにした。HiTAP1は、既知のH3/H4シャペロンAsF1と同様に単独でH3/H4と結合し、ヒストンシャペロンとしての活性を持つ。HiTAP1はspASFIと直接結合しないが、H3/H4を介して三者複合体を形成することから、spASFIとは別の部位でH3/H4と結合することが示唆された。さらに、in vitroでH3/H4を解離させる活性を持つHiTAP1のC末端50アミノ酸は、3ヘリックスバンドルからなる新規の構造モチーフであることが横浜市大の西村善文先生の研究グループとの共同研究から明らかとなった。H3との相互作用部位とH3/H4解離の分子メカニズムについて、変異体を構築、精製して生化学的解析を進めている。 生体内においてもHiTAP1はH3のみと共精製されることや、共精製されたH3には、S期新規合成H3に特徴的な修飾であるK56アセチル化が観察されなかったことから、全長HiTAP1は細胞内でもH3/H4を解離させる活性を持つことが考えられる。HiTAP1破壊株の様々な薬剤に対する感受性を検討したところ、転写阻害剤Thiolutinに対する耐性が上がることを見いだした。HiTAP1と共精製されたH3には転写活性化と関連するK4me2/3が検出されたことより、HiTAP1の標的となるH3やゲノム領域について今後解析を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規ヒストンH3結合因子Mlo2(HiTAP1)によるヌクレオソーム制御システムについて、分子メカニズムと生理機能解析を計画通り進められている。
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今後の研究の推進方策 |
Mlo2(HiTAP1)の標的となるR3の特異性について解析を進めることで、Mlo2の生理機能を明らかにしたいと考えている。また、生化学的解析と構造解析の連携をさらに進め、H3/H4解離の分子メカニズムについて明らかにする。
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