真核生物のゲノムDNAは高度に折り畳まれクロマチンとして核内に収納されている。ヌクレオソームは折り畳みの基本構造であり、この構造は能動的に再構成されるダイナミックさを持つ。DNAのメチル化修飾、ヒストン翻訳後修飾はヌクレオソーム構造調節に関与するが、詳細な分子機構はよくわかっていない。我々はヒストン脱メチル化酵素KDM2A遺伝子からの2つの蛋白質の発現抑制がrDNA プロモータークロマチン上のヒストン量を上昇し、rDNA転写を抑制することを観察した。本研究では、2つの蛋白質の機能それぞれについて解析した。その結果、KDM2A遺伝子からの2つの産物は協調して働きrDNA転写を調節すること、ヒストン量調節にはさらに別の因子が必要なことが明らかになった。次に、KDM2AのrDNA プロモーターへのリクルート機構を調べた結果、KDM2AはCXXCドメインによる非メチル化CpG配列結合活性を介してrDNA promoterに結合すること、さらにrDNA promoterに結合したKDM2Aは飢餓時に脱メチル化活能が活性化され、H3K36me2が脱メチル化されrDNA転写を抑制することが明らかとなった。一方、近年CpG islandをもつPol IIによって転写される遺伝子にKDM2Aは結合しH3K36me2を脱メチル化することが外国のグループから報告された。我々はCpG island遺伝子にもKDM2AがCXXCドメインを介して結合することを確認したが、H3K36me2脱メチル化にはCXXCドメインは必要ないことが分かった。以上の結果はKDM2AのCXXCドメインは飢餓時にKDM2AがrDNA プロモーターで脱メチル化を発揮するときにのみ特異的に必要であり、KDM2A作用発揮においてrDNA プロモーターは独特なクロマチン構造を有していることが明らかになった。
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