研究概要 |
繊毛虫であるテトラヒメナは、ひとつの細胞内に大核・小核という構造と機能の異なる2つの細胞核を持つという特徴がある。本研究課題は、その特性を活かして、テトラヒメナが大核・小核へのタンパク質の核輸送をどのように使い分けているかを検討し、大核・小核の遺伝情報場形成に関与する因子とその仕組みを明らかにするものである。具体的には、項目1)大小核特異的な核輸送システムの同定と、項目2)核分化における核輸送関連因子の動態の解析を行う。本年度は、主に項目1について検討した。まず大小核に特異的な核移行シグナルの同定を試みた。大核特異的なヒストンタンパク質(histone H1)と小核特異的なリンカーヒストンタンパク質(MLH)の断片それぞれにGFPを融合させたものをテトラヒメナ細胞で発現させ、その断片の大小核への局在性から、大小核局在に必要な最小ペプチドを決定した。さらに、大小核特異的あるいは共通のヌクレオポリン(例えば、Nup98,Nup96,Nup93など)に結合するタンパク質をプロテオミクスの方法で網羅的に解析することによって、大小核特異的なヌクレオポリンあるいは輸送因子であるインポーティンβの解明を進めた。現在までのところ、核膜孔複合体に関しては、大小核それぞれに特異的なヌクレオポリンとしてNup153やNup214を、共通のものとしてNup85,Nup54など、新規に複数のヌクレオポリンを同定した。核輸送因子については大小核にそれぞれ特異的なimportin βを一つずつ同定した。項目2については、項目1で見つかったNup98,Nup93について、核分化過程をtime-lapseとFRAP法、ライブクレム法で観察した。これらの成果は国内外の学会や研究会で発表した。
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