繊毛虫であるテトラヒメナは、ひとつの細胞内に大核・小核という構造と機能の異なる2つの細胞核を持つという特徴がある。本研究課題は、その特性を活かして、テトラヒメナが大核・小核へのタンパク質の核輸送をどのように使い分けているかを検討し、大核・小核の遺伝情報場形成に関与する因子とその仕組みを明らかにするものである。具体的には、項目1)大小核特異的な核輸送システムの同定と、項目2)核分化における核輸送関連因子の動態の解析を行う。項目1に関しては、核輸送システムのうち、核膜孔複合体を構成するヌクレオポリン(大小核のそれぞれに約30種類存在すると想定される)の同定を行った。前年度までに発見したヌクレオポリンNup98およびNup93にGFPを融合して融合遺伝子をテトラヒメナで発現させ、GFP抗体で沈降してきたタンパク質群をプロテオミクスの手法を用いて解析し、新たに5種類のヌクレオポリンの同定に成功した。その中には、大核・小核のそれぞれに特異的に局在するもの、両者に局在するものがあった。項目2については、項目1で見つかったヌクレオポリンについて、受精核が核分化する過程を生きた細胞で、time-lapse法、FRAP法、ライブクレム法を用いて観察した。その結果、受精核(元々は、小核)が大核へ分化するのに先だって、大核タイプのヌクレオポリンが特定の核に出現すること、そしてその核だけが大核分化することが明らかとなった。一方、この大核分化予定核では、小核タイプのヌクレオポリンは、大核タイプのヌクレオポリンと置き換わるように減少していくことが分かった。これらの結果は、核膜孔複合体が、核分化を決定付ける要因であることを示している。これらの成果を国内外の学会や研究会で発表した。
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