研究領域 | メゾスコピック神経回路から探る脳の情報処理基盤 |
研究課題/領域番号 |
23115502
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
西丸 広史 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (20302408)
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キーワード | 神経科学 / 生理学 / 脳・神経 |
研究概要 |
本研究では、脊髄運動神経回路の基本的な結合が形成されるマウスの胎生期から新生児期において、1)運動ニューロンと直接結合し、ネガティブフィードバック回路を形成するRenshaw細胞との結合様式の発達メカニズム、および2)Renshaw細胞を含む脊髄前角のGABA作動性ニューロンの運動神経回路網における機能的成熟過程を明らかにすることを目的としている。今年度は、Renshaw細胞の軸索投射様式を詳細に解析することで、フィードバック回路の脊髄内における空間的な関係を明らかにした。特に、新生児期のRenshaw細胞は広範囲にその軸索を伸展していることを明らかにした。この成果は第34回日本神経科学大会において発表した。 また複数のRenshaw細胞の活動を同時に記録するためのカルシウムイメージングのための実験条件設定を行い、Renshaw細胞のみをカルシウム感受性色素で染色する方法を確立した。 また、腰髄腹外側に局在する新規のGABA作動性の抑制性脊髄介在神経細胞のグループ(ventrolaterally located GABAergic neurons ; VL-GN)を同定した。このニューロン集団は歩行運動様リズム活動の際にリズミックに発火し、特に屈筋・伸筋の活動の移行期に発火する。この際、個々の神経細胞の発火パターンは、リズミックな興奮性と抑制性のシナプス入力を交互に受けることによって決定されていることが明らかになった。さらに形態学的解析によって、これらの神経細胞はその軸索を脊髄同側の細胞体の近傍に投射しており、腰髄の局所回路による屈筋・伸筋の活動パターン形成に深く関与していることが示唆された。これは上記のRenshaw細胞の広範囲に渡る投射の広がりとは対照的であった。このニューロンはフィードバック回路との関係がこの成果は研究代表者が筆頭著者および責任著者として国際学術誌Journal of Neurophysiologyに掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
神経回路の電気生理学的解析および組織学的解析はおおむね順調に進んでおり、計画している光遺伝学についても実験装置をそろえ、それに必要な動物を連携研究者と作製・繁殖中である。
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今後の研究の推進方策 |
現時点で大きな変更を予定はない。引き続き、マウス新生児・胎児の脊髄摘出標本で腰髄腹側に局在する抑制性ニューロンと運動ニューロンを可視下に同定し、同時にホールセルパッチクランプ記録を行い、シナプス結合の性質とその発達にともなう変化を明らかにする。また、カルシウム・イメージング法を用いた光学的測定と組み合わせることによってフィードバック回路内の結合様式と制御様式を明らかにする。また、光遺伝学に必要な遺伝子改変マウスの作製・繁殖を進めて行き、光による神経回路の制御の実験を行なう。
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