研究領域 | メゾスコピック神経回路から探る脳の情報処理基盤 |
研究課題/領域番号 |
23115503
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
柳川 右千夫 群馬大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (90202366)
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キーワード | 制御性ニューロン / グリシンニューロン / グリシントランスポーター / 遺伝子改変マウス / Cre/loxPシステム |
研究概要 |
脳は興奮性ニューロンと抑制性ニューロンから構成される神経ネットワークの集まりからできている。GABAニューロンとグリシンニューロンが抑制性ニューロンの代表であるが、両者とも比較的少数で散在しているので、生のスライス標本で同定するのは困難である。一方、様々な機能プローブや多種類の蛍光タンパク質が開発され、神経回路の研究に応用されている。しかし、特定のニューロンに限定して機能プローブや蛍光タンパク質を安定的に十分発現させることは容易ではない。そこで、本研究では抑制性ニューロンあるいはグリシンニューロンに機能プローブや蛍光タンパク質を発現させることを目的として、Cre/loxPシステムを利用した遺伝子改変マウスの開発を目指している。 グリシントランスポーター2(GlyT2)遺伝子にCreレコンビナーゼ(Cre)遺伝子をノックインしたGlyT2-CreノックインマウスにおけるCre活性を検討するために、GlyT2-CreノックインマウスとlacZが発現するレポーターマウス(R26Rマウス)を交配した。得られた産仔の脳についてX-gal染色法で検討した結果、脳幹と小脳にlacZの強い発現が観察され、Cre活性がグリシンニューロンに限局している可能性が示された。また、GlyT2-Creノックインマウスでは、Cre遺伝子が翻訳開始コドンのあるエクソン2に挿入され、GlyT2遺伝子がノックアウトされるように設計した。GlyT2-Creノックインマウスのホモ接合体(GlyT2ノックアウトマウス)では、生後18日までに全例死亡し、righting reflexの障害やhind limb claspingが観察され、グリシン神経伝達の障害による運動系の異常が示唆された。従って、GlyT2-Creノックインマウスは、脳の機能におけるグリシン神経伝達の役割を研究する上で有用な資材であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GlyT2-CreノックインマウスにおけるCre活性がグリシンニューロンの豊富な脳幹と小脳で観察されたことで、GlyT2-Creノックインマウスが使用できる見通しが立った。さらに、GlyT2-Creノックインマウスのホモ接合体がグリシン神経伝達の役割を研究する上で有用な資材であることを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
GlyT2-CreノックインマウスにおけるCre活性がグリシンニューロン特異的であることを確認するためにレポーターマウスを利用した組織学的解析を進め、グリシンニューロンに機能プローブや蛍光タンパク質が発現させる系を樹立する。また、GlyT2-Creノックインマウスのホモ接合体を用いて運動におけるグリシン神経伝達の役割について明らかにする。一方、VGAT遺伝子とCre/loxPシステムを利用したトランスジェニックマウスを作製し、抑制性ニューロン全体に機能プローブや蛍光タンパク質を発現させる系を樹立する。
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