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2011 年度 実績報告書

光操作法による初期視覚回路特性の抽出と書き換えに伴う構造変化の解析

公募研究

研究領域メゾスコピック神経回路から探る脳の情報処理基盤
研究課題/領域番号 23115521
研究機関生理学研究所

研究代表者

松井 広  生理学研究所, 大脳皮質機能研究系, 助教 (20435530)

キーワード脳・神経 / 神経科学 / 生理学
研究概要

神経細胞間をつなぐシナプスにおける信号伝達効率を調整することで、情報の流れ方を変え、既存の配線を使いつつも、環境への適応・学習・記憶といった脳機能が達成されていると考えられる。ところが、脳内にどんな回路が実装されていて、個々のシナプスの可塑性がどのように進行するのかに関して、ほとんど検証が進んでいない。本研究では、まず、網膜-外側膝状体(LGN)-皮質へと伝わる初期視覚過程に関わる、メゾスコピック回路を対象とし、その特性を抽出する。続いて、特定の網膜細胞の活動を光操作することで、この回路の書き換えを促し、回路特性の変化を生理学的に解析する。この研究を通して、1)神経細胞をつなぐシナプスの信号伝達特性が微細構造によっていかに左右されているか、2)生体内で引き起こされた局所的なシナプス伝達特性の変容が、メゾ回路全体の動作にどのように波及するのか等を明らかにする。昨年度の研究では、視神経線維一本を立て続けに刺激すると、応答が急速に抑制されることを見出した。シナプスから溢れ出た伝達物質が近隣のシナプスの受容体を脱感作させることで応答が抑制されることが明らかになった。したがって、視神経-中継細胞シナプスは一見、ローパスフィルタリングをしているように見える。しかし一本の視神経線維は複数の箇所で、ひとつの中継細胞とコンタクトを形成しており、シナプスの総数は線維毎に大きくバラつくことが判明した。シナプス総数が多い線維の場合には、シナプス後電流は抑制されるものの、元々のシナプス後電流の振幅が大きいため、続けざまの刺激に対して、中継細胞が追随して発火し、むしろハイパスフィルター様信号処理をしていることが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

シナプスの微細形態が信号伝達に与える影響を精緻に調べることができたという意味では、本プロジェクトの前半の目的は達成できた。続いて、光操作法を用いて、回路の書き換えを試みて、微細形態や信号伝達特性に対する影響を調べるのが後半の目的である。光操作が可能なトランスジェニックマウスの系統を複数用意することができ、これを用いての実験が進んでいることから、プロジェクトはおおむね順調に進展していると評価している。

今後の研究の推進方策

本年度は、光操作法を活用して、昨年度見出した初期視覚回路の書き換えを誘導することを目指す。このためにも網膜およびLGNの回路を利用するメリットがある。というのも、網膜は脳への窓口であり、生体を傷つけることなく、非侵襲的に光刺激を送り込むことが可能だからである。非侵襲的に網膜細胞を活性化させるために、光感受性タンパク質(ChR2)を様々な細胞種に特異的に発現するトランスジェニックマウスを作製しているが(Tanaka^*,Matsui^*,et al.,submitted)、このうち、グリア特異的に発現する系に非常に興味深い特性を見出した。このマウスにおいて、小脳バーグマングリア細胞を光刺激すると、グリアからグルタミン酸が放出され、神経細胞間のシナプス可塑性を誘導することなどが可能であることを見出した(Sasaki,...,Matsui^*,submitted)。このマウス網膜での発現を調べたところ、ミュラー細胞に強い発現が見られた。このマウスを用いることで、グリアから神経細胞への信号伝達機構を調べるとともに、この経路を利用した初期視覚回路の書き換えを試みる。また、神経細胞からグリアへの信号伝達過程も調べることで、神経回路とグリア回路のふたつの回路の間に、どのような相互作用があるのかを解明し、メゾ回路を構成する注目されざるグリア回路の役割にもスポットライトを当てていきたい。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2011

すべて 学会発表 (3件)

  • [学会発表] Physiological impact of limited transmitter diffusion at a multi-synapsecontact2011

    • 著者名/発表者名
      Ko Matsui
    • 学会等名
      Society for Neuroscience
    • 発表場所
      Washington DC (USA)
    • 年月日
      2011-11-13
  • [学会発表] 光による記憶操作の可能性2011

    • 著者名/発表者名
      松井広
    • 学会等名
      生理研研究会「神経活動の光操作(行動制御への応用)」
    • 発表場所
      生理学研究所(愛知県)
    • 年月日
      2011-09-29
  • [学会発表] 脳回路光摂動法による記憶メカニズムの解明2011

    • 著者名/発表者名
      松井広
    • 学会等名
      生理学研究所研究会「グリア細胞機能から迫る脳機能解明」
    • 発表場所
      生理学研究所(愛知県)
    • 年月日
      2011-06-18

URL: 

公開日: 2013-06-26  

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