研究実績の概要 |
様々な運動や知覚に対して個々の神経細胞がどのように反応するか,あるいはどのような部位の活動が上昇するかなど脳の活動のミクロおよびマクロな性質は詳細に研究されている.一方,脳内では多数の神経細胞の集団活動によって情報が表現されていると考えているにもかかわらず,数百個レベルの集団発火時系列がどのように情報を表現しているかは, 未だに明らかにされてはいない.本研究では,どのような復号化を行えば神経細胞のあるいはネットワークの発火時系列の情報量が最大となるかを解析する手法を提案し,脳部位や神経細胞ごとに異なると予想される符号化方法の違いを詳細に解析した. 共同研究者から,レバーを押して保持し引くという動作を自発的に繰り返すように訓練したラットから記録した多点電極による細胞外記録データの提供を受けて,データの解析を進めた.本年度は,発火時系列の持つ情報量を定量的に評価しどのように復号化すれば情報量が最大の信号が得られるかを解析する手法を導入した.具体的にはカーネルと呼ばれる類似度関数により定義される発火時系列の軌道とレバー運動などの観測信号との相関を求める手法を提案し,相関が最大となるカーネルパラメータを遺伝アルゴリズムによる探索により求める.その際に用いるカーネル群として,少数のパラメータで発火率による情報表現と発火タイミングによる情報表現の両方を包括するようなものを提案している,まずは,運動野の浅層と深層での神経細胞集団の符号化様式がどのように異なるのかを詳細に解析し,浅層では発火率が低く細胞間の相互作用情報が重要であり,深層では個々の神経細胞が比較的独立に発火率で情報表現していることが示唆された.
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