研究領域 | 神経系の動作原理を明らかにするためのシステム分子行動学 |
研究課題/領域番号 |
23115701
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
和多 和宏 北海道大学, 大学院・理学研究院, 准教授 (70451408)
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キーワード | 発声学習 / 学習臨界期 / 遺伝子発現 / 時空間発現制御 / ソングバード / Arc / 感覚運動学習 / ウイルス発現 |
研究概要 |
本研究の目的は、時期特異的・細胞タイプ特異的なウイルス発現系の確立を通して、鳴禽類ソングバードを音声発声学習研究の動物モデルとして利用していくことにある。ソングバードの発声学習・生成行動は、特異的な神経回路Song system(ソングシステム)がすでに同定されている点において脊椎動物の中でユニークな神経回路といえる。さらにこのSong systemは、発声運動制御系と発声学習制御系の2つの神経回路に分別することができ、動物の行動発現(発声学習・生成}を「運動と学習」の2つの回路機能に分解して検証することが可能である。またSong systemは神経核群によって構成されているため、ターゲットとする脳部位に限定した局所的発現制御ができる。まさに、行動をその構成エレメントに分け、その行動が生み出される「場」を念頭においた研究に適している。本研究では、ソングバードを音声発声学習研究の動物モデルとして利用し、特に時期特異的・細胞種特異的なウイルス発現系の確立を通して、多段階発現制御を受ける遺伝子群の脳内機能の実験的検証を目指す。 H23年度から、以下の2点にフォーカスした研究を推進している。 (II)「発現時期特異性」と「細胞タイプ特異性」を兼ね備えたウイルス発現系の確立とその応用利用。(II)レンチウイルスによるトランスジェニック・ソングバード作製の開始。特に(I)に関しては、包括脳ネットワーク・プログラム(岡戸研究室)からの支援を受け、アデノ随伴ウイルスがソングバード脳内神経細胞に高い選択性をもって感染することが明らかにすることができた。今後さらに、細胞タイプ限定性・時期特異性発現制御能をもつ脳内遺伝子発現改変を可能にするシステムの構築を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究提案の申請時に記述した研究計画通り進行している。
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今後の研究の推進方策 |
上記9.研究実績の概要で、述べた2つの実験はH24年も継続して実施する。さらに今後は、時空間制御を与えた遺伝子改変技術を利用し、実際にソングバード動物個体レベルにおける音声発声学習・生成への影響の解析・検証をはじめる。この際の行動表現型の抽出・解析には、特に音素時系列偏移制御(HVC神経核機能)構成音素の音響特性制御(Hz, entropy variance等:RA神経核機能}メカニズムにおける影響を実験的に検証する。これらを進めていくことで、行動生成の『時』と『場』を念頭に入れた行動表現型発達に伴うダイナミクスを作る神経分子基盤を明らかにしていく。
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