研究領域 | 神経系の動作原理を明らかにするためのシステム分子行動学 |
研究課題/領域番号 |
23115706
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
冨田 太一郎 東京大学, 医科学研究所, 助教 (70396886)
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キーワード | イメージング / 塩応答 / MAPK |
研究概要 |
本年度は、生きた線虫個体に塩刺激を与えて、特にASER感覚神経におけるMAPK(MPK-1)、カルシウムシグナル、small G-protein(rasホモログLET-60など)活性化動態を蛍光イメージング法によって解明することを目指した。さらに、刺激の強さ、時間、頻度を変化させ、これらのパラメータに対する各分子の応答特性を検討した。 具体的には、環境応答の情報伝達経路上の各分子活性化を可視化する各蛍光プローブ(カルシウムシグナル、small G-protein、MAPK)を線虫神経に発現させた線虫をそれぞれ作成した。感覚ASERでは、Raichu-Rasプローブの発現を試みたが、安定してうまくプローブを発現する線虫が得られなかった。 このプローブはヒト由来で哺乳類細胞用であったために、遺伝子配列の最適化を検討し、線虫RasホモログのLET-60の配列を用いて新たに線虫型Ras活性蛍光プローブを作成した。この線虫型Rasプローブで哺乳類培養細胞のRas活性を可視化することに成功したので、今後引き続いて線虫で活性測定を試みる。一方で、カルシウム活性をイメージングしながら、動物個体に繰り返しNaCl-off刺激を行ったところ、カルシウムシグナルはMAPKと同様に頻度依存的にシグナルが減弱するという知見を見いだした。一方で、MAPK活性とは異なり、カルシウムシグナルは非常に短いNaCl-off刺激によって最大値まで活性化が生じる点で大きく違うことも分かった。次年度はカルシウムシグナルとMAPKシグナルとの相違点について引き続き解析を行うとともに、引き続いて個体Rasシグナル動態の解明も目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画の通り、MAPKと上流シグナルの相違点と相同点を見いだす目的で研究を実施し、実際に上流のカルシウムシグナルについて、周期的な刺激に対しての挙動の相同点および相違点が明確になった。Rasイメージングの実施過程でヒト型のプローブでは線虫個体レベルの測定が難しいことが判明し、別のkasプローブを用いる必要に迫られたが、これは申請時より想定の範囲内であり、この過程で新規の線虫型Ras(LET-60)の活性可視化プローブの作成にも成功した。よって、おおむね予定通り進行している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までに、MAPKシグナルとカルシウムシグナルとの相同点から、カルシウムシグナルがMAPKの上流に位置する可能性が示されてきているが、その一方で、カルシウムシグナルが最大活性になる条件でもMAPKは最大にならない場合もあることから、シグナル伝達過程でシグナルのon/offをふるい分けるフィルター機構があると思われた。おそらくはシグナル伝達経路の途中の何らかのフィードバック機構の存在によってフィルター機構を形成すると考えられるため、実際に測定したデータを基にフィードバック回路を想定した数理モデルを作成して、論理的にフィルターが成立するか否かを検証する。また、Rasイメージングについては引き続いて個体レベルのイメージングに挑戦し、感覚神経内の一連の情報伝達機構の解明をめざす。
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