研究領域 | 神経系の動作原理を明らかにするためのシステム分子行動学 |
研究課題/領域番号 |
23115708
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
井上 謙一 京都大学, 霊長類研究所, 特定助教 (90455395)
|
キーワード | 神経科学 / 脳・神経 / バイオテクノロジー / ウイルスベクター / 認知科学 |
研究概要 |
本研究では、感染性の異なる複数のウイルスベクターを利用して、特定の神経回路を構成するニューロン集団における遺伝子の発現制御を実現する技術を開発している。本年度は、研究代表者らが近年開発に成功した逆行性感染型レンチウイルスベクターと、Creリコンビナーゼによる部位特異的組換え反応を利用して、特定の神経路を構成するニューロンでのみ外来遺伝子の発現が起こるような遺伝子操作手法を、サルの黒質線条対投射系において確立した。また、テトラサイクリン応答プロモーター(TRE)の下流にテタヌストキシン軽鎖遺伝子を挿入した逆行性感染型レンチウイルスベクターと、テトラサイクリン応答因子を発現するアデノ随伴ウイルスベクターの組み合わせにより、サル黒質線条体投射系においてドキシサイクリンの投与依存的に神経伝達阻害を引き起こすシステムの確立に成功した。このモデルザルにおける行動学的変化を解析した結果、ドキシサイクリン投与依存的に行動障害が誘発されることが確認され、またこの効果は可逆性があることが示された。本年度はさらに、これらの神経路選択的な遺伝子発現ベクターシステムにおいて、shRNAを用いたRNA干渉系を構築するため、広範な神経細胞で発現を示し、神経可塑性に関与するNMDA受容体(NR1)を標的遺伝子としたRNA干渉実験系の構築に取り組んだ。まずニホンザルNR1(GRIN1)遺伝子の配列から、スプライシングバリアント共通領域をターゲットとして複数のshRNA生成配列をデザインし、プラスミドベクターおよびAAVベクターに搭載し、培養細胞系において発現抑制効果を検討し、最適配列を決定した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書の研究の目的および実施計画欄に記載した、霊長類における神経路選択的遺伝子発現法の実現、霊長類における神経路選択的な神経活動抑制法の実現、霊長類における神経可塑性関連遺伝子の発現抑制系の開発、の3項目全てにおいて当初見込んだ通りの成果を得ており、研究が順調に進展していると考えられるため。
|
今後の研究の推進方策 |
研究は当初の予定通り順調に進展していると考えられるため、今後も当初の予定に従い、前年度開発に成功した神経路選択的な神経活動抑制法の霊長類における応用研究と、霊長類における神経路選択的な神経可塑性関連遺伝子の発現抑制系の実現に注力し、神経路選択的なシグナル抑制法による霊長類の大脳基底核情報処理機構の解析に向け研究を推進していく。
|