研究領域 | 神経系の動作原理を明らかにするためのシステム分子行動学 |
研究課題/領域番号 |
23115709
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松尾 直毅 京都大学, 次世代研究者育成センター, 特定准教授 (10508956)
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キーワード | 記憶 / マウス / 神経回路 |
研究概要 |
動物は外界環境から多様かつ膨大な量の感覚情報を入力し、それらを脳内で保存し、必要に応じて読み出す作業を行い、最終的に"行動"という形で出力する。この読み出しの際に、脳では入力情報を過去の記憶に照らし合わせ、似た情報を別のものであると識別(pattern separation)したり、一部の断片情報(似た情報)から元の記憶全体を再構成(pattern completion)するなどの高度な情報処理を行っている。これらの機能は、動物が状況に応じて適切な行動を起こす上で重要な役割を果たしていると考えられるが、これら記憶情報の読み出し制御の情報処理を担う神経回路やその仕組みはほとんど明らかになっていない。そこで本研究では申請者らが開発した「時間的に離れた2点での動物の行動の際に活動したそれぞれの神経細胞集団を同一個体の脳内において同時に可視化可能な遺伝子改変マウスのシステム」を利用して研究を行う。 文脈依存的恐怖条件付け学習課題は、文脈という条件刺激(Conditioned Stimulus: CS)と電気刺激という非条件刺激(Unconditioned Stimulus: US)を関連づけた連合学習である。したがって、学習成立後に再びCSを提示することにより記憶の想起が誘導される。この際に、私たちヒトや齧歯類であるマウスなどの脳では、完全同一のCSではなくても、CSを構成する要素の一部の提示により、元のCS全体を再構築する能力(pattern completion)を備えていることが知られている。文脈依存的恐怖条件付け学習課題の場合、CSである文脈は複数の感覚情報より構成されている。そこで、視覚、嗅覚、体性感覚情報の一部を変化させた文脈をそれぞれ作製し、それぞれの文脈提示による条件付け記憶の想起の強さ(freezingすくみ反応を示す割合)を測定する。また、各感覚情報の変化の度合いが異なる文脈の作製を行い、同様に記憶の強さを測定する。このようにして、文脈情報が不完全であるにもかかわらず、記憶が強く想起される文脈条件の確立を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の申請時に記載した内容をほぼ達成しているので、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に確立した条件を用いて、次年度は記憶情報の読み出しに関与する脳領域・細胞の解剖学的な解析を行う予定である。
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