公募研究
脳・神経系の複雑なネットワークの機能はその構造と密接に結びついているが、実際にその 機能と構造の関連を詳しく明らかにした例は限られている。本研究では、全ニューロン間の接 続様式が明らかになっているモデル動物・線虫 C. elegans を対象として、特定のニューロンの活動が神経細胞のネットワークを介してどのように行動を制御するのかを統合的に解析した。具体的には、「C. elegans の匂い忌避行動とその増強」(Kimura et al., J. Neurosci. in press) を制御する神経回路の活動を解析した。まず、独自に開発した線虫行動計測装置により、C. elegansが匂い物質2-ノナノンを忌避する際に、非常に高確率で匂い勾配を下る事を明らかにした。この結果 は、従来からの biased random walk モデルや風見鶏機構では説明困難であり、C. elegans の 2-ノナノンへの応答行動は新たな原理によって制御されている可能性が高いと考えられた。さらに、非拘束下で行動するC. elegansをリアルタイムで追跡しながら任意の匂い刺激を行い、この時の神経細胞活動をカルシウムイメージングと光遺伝学によって解析する統合型顕微鏡システムを、橋本浩一教授(東北大学)との共同研究で開発した。この統合型顕微鏡システムを用いた研究により、匂い上昇と匂い減少に応答する感覚神経細胞をそれぞれ同定し、行動を制御する感覚神経活動に関して新たなモデルを提唱した。この統合型顕微鏡システムはショウジョウバエやゼブラフィッシュなど小型モデル動物の化学応答行動にも応用可能であり、動物の行動を制御する脳機能の高精度の解明に大きな役割を果たすと考えられる。
2: おおむね順調に進展している
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Neurosci Res
巻: 75 ページ: 65-58
10.1016/j.neures.2012.04.011
Genes Cells
巻: 17 ページ: 365-386
10.1111/j.1365-2443.2012.01594.x