研究領域 | 神経系の動作原理を明らかにするためのシステム分子行動学 |
研究課題/領域番号 |
23115718
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
中村 加枝 関西医科大学, 医学部, 教授 (40454607)
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キーワード | ドパミン / 霊長類 / 眼球運動 / 大脳基底核 |
研究概要 |
[目的・重要性] 「報酬獲得」のための「行動発現」における大脳基底核線条体の役割はこれまで詳細に調べられてきた。しかし、報酬獲得のために「行動を抑制」をしたり、「嫌悪刺激を回避するために行動を発現・抑制する」場合、線条体がどのように関与するかはほとんどわかっていない。そこで我々は、線条体における嫌悪刺激情報処理、行動抑制処理機構を霊長類においてあきらかにすることができる眼球運動課題を考案した。[方法](1)中心の注視点の色でgo(行動を起こす)かnogo(行動を抑制する)を知る。サルはこれを注視し続ける。(2)右か左に条件刺激が短時間呈示され、その試行が報酬を得る試行か嫌悪刺激を避ける試行かを知る。(3)遅延期間の後、眼球運動のターゲットが呈示される。Go試行ならそのターゲットへ向かう眼球運動、nogo試行なら中心の注視点を見つめ続ける。(4)(2)に示された結果が与えられる。これにより、報酬嫌悪、gonogoの二つの因子による2x2の行動パターンが作成される。 [結果]サルは報酬を得る試行は容易に学習し、嫌悪刺激を避ける試行も報酬試行より時間を要したが学習できた。すなわち、予測される結果の価値と行動という二つの因子を掛け合わせた試行をサルは学習することができることがわかった。2頭のサルにおいて訓練が終了したので、基底核線条体(背側、腹側)からの単一神経細胞外記録を開始する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サル2頭において、報酬・嫌悪情報かつ行動発現・抑制の2つの因子を持った行動課題を学習させることができた。課題の細かいパラメータの指定も決定でき、順調といえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、課題遂行中の大脳基底核線条体の単一神経細胞外記録を行い、ニューロンレベルでの報酬価値や行動決定情報表現を明らかにする。さらに、線条体に神経伝達物質(ドパミン、セロトニン)の拮抗薬を部分投与して行動の変化を計測し、線条体での神経伝達物質の役割を明らかにする。
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