研究領域 | 神経系の動作原理を明らかにするためのシステム分子行動学 |
研究課題/領域番号 |
23115721
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
知見 聡美 生理学研究所, 統合生理研究系, 助教 (30396262)
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キーワード | 神経科学 / 生理学 / 大脳基底核 / 運動制御 / 遺伝子改変マウス |
研究概要 |
運動制御の高次中枢である大脳基底核の主要な入力部である線条体は、大脳皮質の広い領域からの入力を受けると同時に中脳ドーパミン作動性の投射を受けている。パーキンソン病において線条体内のドーパミンが枯渇すると重篤な運動障害が生じることから、ドーパミン神経伝達が運動制御において極めて重要であることは知られているが、機能の詳細は不明である。本研究では、大脳基底核内情報伝達と運動制御におけるドーパミン神経伝達の機能を解明することを目的として、ドーパミン受容体ノックアウトマウスをはじめとする遺伝子改変マウスにおいて、覚醒下で神経活動の記録を行っている。 ドーパミンD1受容体の発現を調節することが可能な遺伝子改変マウスにおいてD1受容体の発現を低下させると、淡蒼球内節ニューロンにおいて、大脳皮質の電気刺激が惹起する3相性の応答のうちの抑制が著しく減弱した。淡蒼球内節における抑制は、大脳皮質-線条体-淡蒼球内節路(直接路)を介して伝達されることから、直接路ニューロンの興奮性が低下していると考えられる。このような状態のマウスの自発運動量を測定したところ、低下していることがわかった。以上の結果より、D1受容体を介したドーパミン神経伝達は、線条体の直接路ニューロンに対して興奮性に作用することにより、運動の発現を促進するように働くことが示唆された。 本研究により、大脳基底核内情報伝達におけるD1受容体を介した神経伝達の機能を明らかにすることが出来た。今後さらに、D2受容体の機能も明らかにすることにより、大脳基底核内情報伝達におけるドーパミン神経伝達の機能の全貌を明らかにすることが出来る。また、D1およびD2受容体を介したドーパミン神経伝達の消失が、パーキンソン病の症状発現において、それぞれどのように関与しているのかも明らかにすることにより、効果的な治療法の開発にも貢献できると期待され、社会的影響も大きいと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大脳基底核内情報伝達と運動制御におけるドーパミン神経伝達の機能を解明という目的を達成するため、D1受容体の発現を調節することが可能な遺伝子改変マウスの神経活動を覚醒下で記録し、大脳基底核内情報伝達におけるドーパミンD1受容体を介した神経伝達の機能を明らかにすることが出来たため。
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今後の研究の推進方策 |
大脳基底核内情報伝達におけるドーパミンD2受容体の機能を明らかにするため、D2受容体のノックアウトマウスの神経活動を、覚醒下で記録する実験を行う。
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