研究領域 | 生命応答を制御する脂質マシナリー |
研究課題/領域番号 |
23116506
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
國澤 純 東京大学, 医科学研究所, 講師 (80376615)
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キーワード | 腸管免疫 / 脂質 / アレルギー / 生体防御 / ワクチン |
研究概要 |
腸管には、病原微生物に対する生体防御と食餌性抗原や腸内フローラに対する免疫学的寛容という、相反する免疫応答を巧みに制御するための粘膜免疫システムが備わっている。腸管免疫の有する最大の特徴の一つとして、免疫系の発達、制御にサイトカインなどの生体内分子だけではなく、食餌性成分や腸内フローラなどの腸内環境因子を介した相互作用が大きく関わっていることが挙げられる。なかでも食餌性脂質とその代謝が腸管免疫の制御、ならびに食物アレルギーや炎症性腸疾患などの免疫疾患の発症に関与していることが以前より示されてきたが、その詳細は未だ解明されておらず、分子・細胞・生体レベルでの解明が待望されている。本研究においては、生体防御と恒常性維持に関わる腸管免疫システムの制御における脂質と代謝に焦点を当てた研究を遂行している。 本事業の初年度にあたる23年度は、これまで進めてきた脂質メディエーターの一つであるスフィンゴシン1リン酸(S1P)と食物アレルギーとの関連に焦点を当て、S1Pの代謝に必須であるビタミンB6に着目した研究を遂行した。ビタミンB6のアンタゴニストを飲料水と共に与えたマウスに食物アレルギーモデルを適用したところ、アレルギー性下痢の発症が抑制されていた。これらのマウスにおいてはアレルギー誘導分子であるアレルゲン特異的IgEの産生には変化が認められなかったが、アレルギー性下痢を引き起こすエフェクター細胞であるマスト細胞の大腸への浸潤が抑制されていた。ビタミンB6の標的酵素でありS1Pの分解に関わるS1Pリアーゼの阻害剤を投与した際にも同様の結果が得られた。これらの結果は食物アレルギーにおける脂質メディエーターの代謝と食餌性ビタミンとの関連を示唆する重要な結果であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定においては、申請者が有する研究技術のみを用いて研究を遂行する予定であったが、本新学術領域に参画されている他の先生方との共同研究体制を新たに構築できたとにより、新しい解析技術を用いた研究の遂行が可能となったため
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今後の研究の推進方策 |
23年度に得られた知見をもとに、食物アレルギーモデル等の病態モデルを用い食餌性脂質を起点とする腸管組織での脂質形成と免疫制御との相関を明らかにする。特に新たに構築した共同研究体制を活用し、脂質代謝産物の定量と分布解析といった基礎情報の集積と免疫制御機能との関連を分子・細胞レベルで明らかにすることを目指す。
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