公募研究
血管疾患の中でも動脈瘤は根本的治療がなく、その病態機序解明は重要な検討課題である。我々は、動脈瘤形成において重要や役割を果たすサイトカインや弾性線維の分解に関与するMMPの活性を検討し、動脈瘤の進展を抑制する治療法の開発を行うこと目的とし研究を行い、以下の結果を得た。(1)プロスタグランディンE受容体EP4シグナルは、ヒト動脈瘤からの血管平滑筋細胞でIL-6の産生とのMMP-2活性を促進した。(2)17例のヒト大動脈瘤病変部位で、弾性線維の形成の低下と、EP4の発現に有意な相関があった。(3)EP4欠損マウスではカルシウムクロライド誘発による大動脈瘤の発生が抑制された。(4)EP4とApoEのダブルノックアウトマウスではアンジオテンシンIIによる大動脈瘤の発生が抑制された。(5)EP4シグナルの抑制が大動脈瘤の進行を抑制することが強く示唆されたため、ApoE欠損マウスにアンジオテンシンIIを投与する大動脈瘤モデルを用いてEP4拮抗薬の治療効果を検討した。0.01-0.5mg/kg/dayのEP4拮抗薬の経口投与(一日一回投与)で45-87%の有意な抑制が認められ、また、組織学的検討でも弾性線維の分解が抑制されていた。さらに腹部大動脈組織を用いてザイモグラフィーを行ったところ、EP4拮抗薬はMMP-2活性を有意に抑制した。(6)マウスでの治療効果をさちにヒト大動脈瘤組織で検討したところ、IL-6産生(0.7±0.06倍)とMMP-2活性(0.6±0.06倍)を有意に抑制した以上の結果より、EP4シグナルの抑制は弾性線維分解を抑制することで大動脈瘤の進行を抑制する可能性が示唆された。
1: 当初の計画以上に進展している
臨床検体の採取や、動物実験が滞りなく行え、再現性のある結果が得られたため。
EP4拮抗薬がマウス大動脈瘤形成を抑制する、という結果が得られたことより、H24年度は、さらにEP4拮抗薬が大動脈瘤にたいして退縮効果があるかどうかを検討する。技術的な困難は予想されない。
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