研究領域 | 生命応答を制御する脂質マシナリー |
研究課題/領域番号 |
23116517
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
野口 光一 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (10212127)
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キーワード | 脊髄後角 / マイクログリア / 痛み / ロイコトリエン / パッチクランプ / NMDA |
研究概要 |
申請者は、末梢神経障害後、脊髄マイクログリアにてロイコトリエン産生酵素mRNAが数種類発現増加することを発見し、また一次知覚ニューロンの存在する後根神経節においても、CysLT2が発現していることを明らかにした。これはロイコトリエンが、侵害受容系において重要な役割を持っている可能性を示唆しており、疼痛行動実験においても証明されている。本特定研究において、ロイコトリエンによる侵害受容調節機構の分子メカニズムを電気生理学的手法によって検索することで、以下の2点のロイコトリエンの新しい役割を解明することを目的としている。 1.一次知覚ニューロンにおける疼痛センサー蛋白(P2X3受容体など)に対するロイコトリエンによる調節機構の分子メカニズムの解明 2.脊髄後角におけるロイコトリエンによる興奮性調節機構の解明 この1年間にわたる実験により、上記の2の課題の、脊髄後角スライスを用いたロイコトリエンによる興奮性シナプス伝達の調節機構の解明に取り組むことに決定している。 1)SD系ラットから脊髄横断スライス標本を作製し、膠様質細胞にブラインド・ホールセル・パッチクランプ法を適用し、ロイコトリエンLTC4の灌流投与により誘起される膜電流の性質を調べた。 2)微小興奮性シナプス後電流miniature EPSC(mEPSC)に及ぼすロイコトリエン受容体活性化の影響を検討したが、LTB4のダイレクトなEPSC誘導はあまり顕著ではないことが明らかとなった。 3)そこでNMDA電流に対する調節機構の解明を実験の中心テーマとすることに決定した。LTB4の投与が脊髄後角ニューロンのNMDA電流をどの程度、どの頻度で増幅するかを解明するために、現在実験を精力的に実行中である。形態的な所見と一致して、NMDA電流が取れるニューロンの約数分の1の確率でロイコトリエンによるmodulationが観察されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一次知覚ニューロンの調節メカニズムを遂行するか、脊髄ニューロンの調節メカニズムを遂行するかを予備的実験を繰り返すことで、最終的に脊髄ニューロンの興奮性調節の解明に取り組むことに決定した。これは最初から時間がかかることが予想されていたことであった。また、脊髄ニューロンの一部にしか、ロイコトルエン受容体が存在していない、という形態学的事実より電気生理学的反応が取れるのも数ニューロンで一つという状態であり、時間がかかっている。これも予定通りであると考えており、おおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
9で述べたように、NMDA電流の調節に関してはロイコトルエンによる興奮性増加作用が確認出来はじめている。これは全く新しい所見であり、ニューロン数の増加を諮りさらにアンタゴニストによる変化の抑制等、電気生理学的実験を継続する予定である。班会議のメンバーからの指導により、分解しやすいロイコトルエンの取扱に関して上達したので、今後はnの増加とさらに拮抗剤等を用いた仕事を進めている予定である。
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