研究領域 | 生命応答を制御する脂質マシナリー |
研究課題/領域番号 |
23116519
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
井上 博雅 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 教授 (30264039)
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キーワード | 気管支喘息 / 脂質メディエーター / ロイコトリエンB4 / サイトカイン |
研究概要 |
ロイコトリエンB4(LTB4)の低親和性LTB4受容体BLT2の生理作用は不明な点が多い。近年、12-HHT(ヒドロキシヘプタデカエイコサテトラエン酸)がLTB4よりも低濃度でBLT2を活性化することが判明した。本研究の目的は、この12HHT/BLT2シグナルに焦点をあてて、呼吸器系の免疫・アレルギー疾患の病態形成におけるその役割を包括的に解明することである。 BLT2欠損マウスを用いて抗原感作曝露によるアレルギー性喘息モデルを解析したところ、予想に反して抗原の感作曝露によって気道への好酸球浸潤が著明に増加していた。すなわち、LTB4/BLT1系は向炎症性に働き、12-HHT/BLT2系は抗炎症性に働くという全く逆の作用を示すことが判明した。そこで、12-HHT/BLT2系が抗炎症性に作用するメカニズムを検討した。 BLT1とBLT2遺伝子は染色体に隣接して存在するが、BLT2欠損マウスではLTB4による気道への好中球浸潤は野生型マウスと差がなくBLT2欠損マウスのBLT1機能は保たれていた。BLT2欠損マウスの喘息モデルの気道局所では、Th2(ヘルパー2型T細胞)サイトカインの一つIL-13の発現が亢進しており、他のTh2サイトカインであるIL-4やIL-5、Th1サイトカインIFN-γ、血清のIgEレベルはコントロールマウスと差はみられなかった。BLT2欠損マウスで増加したIL-13の主な産生細胞を解析したところ、CD4T細胞が主にIL-13を発現していることが判明した。 以上の結果より、12-HHT/BLT2系はCD4T細胞でIL-13発現をコントロールし、免疫・アレルギー反応を負に制御していることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
BLT2欠損マウスを用いて抗原感作曝露によるアレルギー性喘息モデルを解析し、12-HHT/BLT2系が抗炎症性に作用するメカニズムとして、CD4T細胞でIL-13発現をコントロールしていることを見出した。これらの成果から、当初計画した研究目的は現在までおおむね順調に達成しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
BLT2シグナルのアレルギー反応における役割に関しては、喘息患者検体のBLT2解析をすすめることにより、ヒト疾患病態と12-HHT/BLT2系との関連を解明する。さらに、BLT2欠損マウスの喘息モデルから採取したCD4T細胞を用いて、BLT2シグナルによるIL-13発現抑制の機序を分子レベルで解析をすすめていく。 BLT2シグナルの自然免疫反応における役割に関しては、LPS誘導性気道炎症モデルを解析する。BLT2欠損で炎症の増悪が見られた場合は、タバコ煙曝露による気道炎症モデル・肺気腫モデルの解析に進む。
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