研究領域 | 配偶子幹細胞制御機構 |
研究課題/領域番号 |
23116709
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
新屋 みのり 国立遺伝学研究所, 系統生物研究センター, 助教 (00372946)
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キーワード | 遺伝子 / 精原幹細胞 / ゼブラフィッシュ / 配偶子形成 |
研究概要 |
本研究においては、初期精原細胞に異常が認められるゼブラフィッシュ突然変異体であるNI161およびPMO35の原因遺伝子の同定および表現型の詳細な解析を行う。これにより、精原幹細胞の増殖や精子形成へと分化に向かわせる制御機構の解明を目指している。本年度は以下について解析を進め、成果を得た。 1)変異体NI161のポジショナルクローニングを進め、該当領域内にナンセンス変異を持つ候補遺伝子を同定した。この遺伝子は他の生物種において解析例のない新規のものであった。 2)変異体NI161の精巣に対して、未分化型精原細胞マーカーのPlzf抗体、アポトーシス細胞を認識するCaspase-3抗体、および減数分裂マーカーのSycp3抗体を用いて免疫組織化学を行った結果、精原細胞の減数分裂への分化は認められず、初期の精原細胞の段階でアポトーシスを起こしていることが認められた。 この結果は形態的な観察で未分化型精原細胞が集積していることとよく一致している。 3)変異体NI161の表現型の一つとして、1)で見つかった候補遺伝子の変異ホモ個体は全てオスとして成熟することを見出した。減数分裂異常のゼブラフィッシュ変異体では卵母細胞の発達異常によりすべてオス化することが知られているが、本研究により、それよりも前の段階の生殖細胞の異常でも同様にオス化することが示された。 4)変異体PMO35の原因遺伝子同定のため、遺伝学的解析用の家系を作成した。 5)変異体PMO35の精巣に対して2)と同様の解析を行った結果、初期型の精原細胞でSycp3の発現が認められた。また、この段階の精原細胞でアポトーシスを起こしていることがわかった。 以上の結果から、NI161変異体では精原幹細胞の維持・分化に必要な新規の遺伝子を見いだせた可能性が高く、PMO35はそれと異なる機構に働く遺伝子であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでにNI161変異体の原因遺伝子候補が見つかっており、免疫組織化学による表現型解析も順調に進んでいる。PMO35変異体の解析も問題は認められない。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画はおおむね順調に進んでおり、計画の変更は必要ないと考える。当初計画通りに進めることで2つの変異体から新たな精原幹細胞の増殖・分化の分子機構が明らかにできるものと考えている。
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