公募研究
がん抑制潰伝子であるPtenを欠損した肝臓では、脂肪肝、非アルコール性脂肪肝炎を経て肝臓癌が発生し、この病態には酸化ストレヌが関与することが報告されている。現代社会における食生活の変化などによって脂肪肝が増加傾向にあることから、脂肪肝を素地とする肝疾患発症のメカニズムやその病態の解明は重要な課題である。転写因子Nrf2は生体防御遺伝子群の発現を制御することが知られているが、一部の癌細胞ではNrf2の活性制御システムが崩壊しており、Nrf2が異常に活性化していることが明らかとなってきた。本研究では、Pten-PI3K-AktシグナルとKeap1-Nrf2システムの相互作用の解明を通して脂肪肝を素地とする肝疾患発症の分子メカニズムを理解することを目的とした。肝臓におけるPten、Keap1、Nrf2の単独および複合欠損マウスを作製したところ、Pten/Keap1二重欠損マウスは1ヶ月齢以前に全例死亡した。肝臓の組織解析より、Pten/Keap1二重欠損マウスでは全く予期しなかった胆管細胞の異常な増生がみられた。この胆管増生はNrf2の量に依存することが、Pten/Keap1/Nrf2三重欠損マウスの解析により明らかとなった。Pten/Keap1二重欠損マウスの肝臓では、Nrf2が恒常的に活性化しているKeap1欠損マウスより強いNrf2の活性化、およびPten欠損マウスより強いAktのリン酸化がみられた。よって、Pten-PI3K-AktシグナルとKeap1-Nrf2システムは相互に影響を及ぼして、互いの活性を正に制御していることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
各種複合欠損マウスの作製が順調に進み、個体レベルで解析することができた。研究計画段階では全く予期しなかった表現型が現れたため、途中で新たな実験手法の立案が必要となったが、順調に進展している。
作製した各種複合欠損マウスを有効に活用して、個体・組織レベルから細胞・分子レベルの解析に移行する予定である。研究実施計画に基づき、更なる研究を遂行する。研究計画の大きな変更は特に予定していない。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件) 図書 (1件) 備考 (1件)
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http://www.dmbc.med.tohoku.ac.jp/official/index.html