真核細胞は、鉄不足、低酸素によるストレスを受けたとき,タンパク質合成が低下することが知られている。本研究では,この現象に関与する翻訳開始因子キナーゼHRIを対象として,新規の鉄・酸素センサータンパク質OGFOD1による活性調節機構について、HRIの翻訳後修飾に焦点を当て、分子・細胞レベルでの解析を行う。 1)OGFOD1について,核移行配列を含むN末端部分28残基を短縮した短縮型OGFOD1組換えタンパク質を用いて,結晶構造解析に向けたスクリーニングを行った。その結果,ヒット条件が見つかり,微結晶が得られた。回折データを収集したものの,低分解能のため構造解析は難しく,分解能向上のため結晶化条件の最適化を行っている。 2)OGFOD1の細胞内での動態・局在を調べるために,蛍光タンパク質を融合したOGFOD1を作製し,蛍光顕微鏡を用いた観察を行った。全長型OGFOD1においては,核への局在が観察された。一方,短縮型OGFOD1においては,核局在のみならず細胞質への分布も認められなかった。 3)培養細胞中におけるHRIのユビキチン化修飾を検出するために,プロテアソーム阻害剤bortezomibを用いて解析を行った。bortezomibによりHRIの分解は抑制されるものの,ユビキチン化は観察されていない。 今後,試験管内において,OGFOD1の酵素活性,OGFOD1とHRIとの相互作用について解析を行う予定である。
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