研究領域 | 翻訳後修飾によるシグナル伝達制御の分子基盤と疾患発症におけるその破綻 |
研究課題/領域番号 |
23117507
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
越川 直彦 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (70334282)
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キーワード | がん / シグナル伝達 / HB-EGF / 受容体型チロシンキナーゼ |
研究概要 |
今年度、MT1-MMPの結合分子として同定した受容体型チロシンキナーゼの1種である(プロテインE)が、MT1-MMPによるプロセシングを受ける可能性を調べた。その結果、MT1-MMPはプロテインEのフィブロネクチンドメインタイプIIIリピート領域を切断することで、プロテインEのN末端のライガンド結合部位を細胞膜上から遊離することが明らかとなった。 プロテインEはライガンドによる活性化を受けることで、EGF受容体シグナルの下流(Ras)を抑制することがすでに報告されている。今回、このプロテインE/そのライガンドによるRas下流のMAPK、AKTシグナルの抑制をMT1-MMPによるプロテインEのプロセシングがキャンセルできるか否かを検証したところ、MT1-MMPはプロテインE/ライガンドによるMAPK、AKTのシグナル抑制を解除することが明確に証明された。 さらに、最近、ライガンド非依存的にプロテインEはEGFによるsmallGTPase活性の活性化に寄与することが報告されている。今回、MT1-MMPはプロテインEをプロセシングすることで、プロテインEをライガンド非依存的に変換することでsmallGTPaseの活性制御に寄与する可能性を見出した。現在、これらシグナルが細胞機能制御に寄与していることを検証している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MT1-MMPが膜上でシグナル分子をプロセシングすることで、間接的に増殖シグナルや生存シグナルの制御に寄与する直接的な証拠が見出されたことは非常に重要なことである。今後、この現象が細胞機能や生体なでの癌細胞の悪性形質の獲得に関わるかを調べることが重要となる。
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今後の研究の推進方策 |
今後、この現象が細胞機能や生体なでの癌細胞の悪性形質の獲得に関わるかを調べることが重要であり、さらに、癌の悪性化を抑制する手段への応用を見出すための重要な情報となる。そのため、今後、本現象を細胞、in vivoで解析する計画である。
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