公募研究
本研究では、セミインタクト細胞リシール法(可逆的形質膜穿孔法)を駆使して病態モデル細胞を構築し、病態環境下におけるシグナル伝達の攪乱機構を解明することを目的とする。糖尿病モデルマウスdb/dbマウス肝臓の細胞質をセミインタクト細胞リシール法により導入した糖尿病モデルH4IIEC(ラット肝臓由来培養細胞)細胞を構築した。この糖尿病モデル肝細胞が病態を再現しているかどうか、インスリン応答性シグナル伝達を調べることにより検証した。インスリン刺激により誘起されるAktあるいはERKのリン酸化を指標として各シグナル伝達経路の活性化をWestern Blotにより調べたところ、興味深いことに糖尿病モデル肝細胞ではAktのリン酸化が特異的に阻害されていた。また、Aktシグナル伝達のダイナミクスを追跡するために、FRETベースのAktリン酸化可視化プローブEeveeのリコンビナントタンパク質を細胞質とともにリシール細胞に導入した。すると予想通り、糖尿病モデル肝細胞ではAktの活性化ダイナミクスが攪乱されていた。また、これまで発表した論文から、糖尿病細胞質存在下においては脂質ホスファチジルイノシトール-3-リン酸(PI3P)が減少をしていることを見いだしている。そこで、PI3P減少とAktシグナル伝達阻害との関連を検証するために、PI3P結合FYVEドメインのGST融合リコンビナントタンパク質(GST-2xFYVE)を細胞内に大量に導入しAktシグナル伝達への影響を調べた。すると、GST-2xFYVEはAktシグナル伝達を阻害することをWestern blotおよびダイナミクス可視化により確認することができた。以上の結果から、シグナル伝達阻害が再現された糖尿病モデル肝細胞を用い、細胞レベルでの病態関連因子解明の一例としてPI3P減少があることを示すことができた。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)
Nature Communications
巻: 4 ページ: -
doi:10.1038/ncomms3262
Advances in Systems Biology
巻: 2 ページ: 6-14