研究領域 | 翻訳後修飾によるシグナル伝達制御の分子基盤と疾患発症におけるその破綻 |
研究課題/領域番号 |
23117519
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西 英一郎 京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (30362528)
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キーワード | 細胞外ドメインシェディング / 炎症 / 非古典的分泌経路 / PKA / リン酸化 |
研究概要 |
細胞外ドメインシェディングは膜タンパク質の機能変換や多機能化を介してシグナル伝達制御を担う重要な翻訳後修飾である。我々は、ナルディライジン(NRDc)が、シェディングの活性化因子であることを明らかにしてきた。NRDc欠損マウスは、複数の炎症疾患モデルで炎症抵抗性を呈し、同分子が炎症性疾患で重要な役割をもつことが示唆された。 シェディング増強活性は細胞外における機能だが、NRDcはシグナルペプチドを有さない可溶型酵素で、その分泌機構は不明である。これまでシグナルペプチドのないタンパク質分泌が翻訳後修飾に依存することが報告されている。NRDc分泌は、炎症性サイトカインなどで誘導されることがわかっており、分泌機構解明が、シェディング活性化機能の解明につながることは明らかである。本申請においては、1)個体レベルにおけるシェディング制御の意義、2)NRDcの分泌における翻訳後修飾の意義、の解明を目的にした。 平成23年度には以下を明らかにすることができた。 1)炎症性腸疾患モデルマウスの病変部位あるいは血清の検討から、NRDc欠損マウスの炎症抵抗性が、NRDc欠損によるTNFalphaのシェディングの低下、およびその下流であるIL-6の分泌の低下によるものであることが示唆された。 2)NRDcの分泌がPKAによるリン酸化で制御されている可能性が示唆され、インビトロキナーゼアッセイを用いて検証したところ、NRDc自身がPKAでリン酸化されることがわかった。さらに、インビトロキナーゼアッセイと質量分析による解析の結果、NRDcには少なくとも10カ所以上のリン酸化部位があること、それらのリン酸化がPKAによって誘導されている可能性があることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の平成23年度の計画欄に記した内容について、プロジェクト1の炎症性腸疾患モデルの解析は順調に進んでいるが、メタボリックシンドロームモデルの白色脂肪組織の解析はやや遅れている。一方プロジェクト2)については、NRDcのリン酸化部位同定に成功するなど、おおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、プロジェクト1)TNFalpha、IL-6の下流シグナリングを組織レベルで検討し、培養細胞を用いて TNFalphaシェディング、IL-6分泌におけるNRDcの役割をさらに明らかにする。また、IL-6あるいはTNFalphaの投与あるいは、そのトランスジーンの発現によって、個体レベルにおけるNRDc欠損マウスの炎症抵抗性がリバースされるかどうかを検討する。プロジェクト2)平成23年度に同定したリン酸化部位の変異体を作製し、NRDc分泌に重要な働きをする部位が存在するかどうかを確かめる。並行して、細胞質NRDcと分泌NRDc(培地中)を、それぞれ免疫沈降法などを用いて精製し、さらに質量分析を行い翻訳後修飾プロフィールを解析する。
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