研究領域 | 翻訳後修飾によるシグナル伝達制御の分子基盤と疾患発症におけるその破綻 |
研究課題/領域番号 |
23117526
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
梁 明秀 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (20363814)
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キーワード | シグナル伝達 / 癌 / プロテオーム / Pin1 |
研究概要 |
ペプチジルプロリルイソメラーゼPin1は前立腺癌の再燃率の高さに相関して発現が増加しており、腫瘍形成や癌の形質変換の維持に重要な役割を演じている。しかしながら、前立腺癌におけるPin1と相互作用するエフェクター因子については同定されていなかった。我々はPin1を分子プローブとしたリン酸化プロテオミクス解析を実施し、前立腺癌における新しいPin1結合タンパクとしTFG(Trf fused gene)を同定した。TFGは種々のがんで認められる染色体の転座においてNRTK1、ALK、NR4A3といった癌関連遺伝子との融合が報告されている。TFGは前立腺癌特異的にPin1と結合し、Dunningラット前立腺癌細胞ではその悪性度にともなって、結合の度合いが増していた。前立腺癌細胞においてsiRNAによるTFG特異的な枯渇は細胞増殖を減少させ、癌形成を抑制し、細胞の増殖の低下と細胞老化の誘導が認められた。また、Pin1はサイトカイン刺激依存的なTFGによるNF-kaB経路の活性化を促進した。また、TFGはアンドロゲン非存在下でAndrogen receptor(AR)の転写活性を促進した。さらには前立腺癌組織検体を用いた解析により、TFGの発現量と前立腺術後のPSA再燃は正の相関を示した。これらの事実は、TFGは前立腺癌において、腫瘍形成への重要な役割を演じていることを支持する結果であるとともに、Pin1を分子プローブとしたリン酸化タンパク探索の有用性が示された。現在、癌幹細胞におけるPin1結合タンパク質について同様なアプローチにて検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Pin1を分子プローブとしたリン酸化プロテオミクスを用いて予後不良の前立腺癌のマーカーを新たに同定した。また、本手法の有用性について検証した。
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今後の研究の推進方策 |
我々が独自に開発した癌幹細胞モデルを用いて、癌幹細胞の増殖や維持に重要なリン酸化シグナルについて、Pin1を分子プローブとして用いたリン酸化プロテオミクスを用いて同定する。また、我々の有するヒトキナーゼライブラリーを用いて、当該タンパク質のリン酸化を司るプロテインキナーゼを同定する。
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