研究領域 | 翻訳後修飾によるシグナル伝達制御の分子基盤と疾患発症におけるその破綻 |
研究課題/領域番号 |
23117529
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研究機関 | 財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
木村 洋子 財団法人東京都医学総合研究所, 生体分子先端研究分野, 主任研究員 (80291152)
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キーワード | ユビキチン / ホメオスタシス / VCP/Cdc48 / 神経変性疾患 / Ufd3(Doa1) / タンパク質分解 / ミトコンドリア |
研究概要 |
ユビキチンは細胞内に豊富に存在するタンパク質であるが、細胞の環境や状態に応じて激しく変動し、適切な量に厳格に調節されている。ユビキチンの不足は、マウスでは不妊、肥満、神経変性変異を起こし、出芽酵母はストレス感受性になり胞子形成能を失う。一方、ユビキチンは過剰にあっても、出芽酵母では重金属に対して感受性になり、細胞に悪影響を与える。従ってユビキチン量が過不足なく調節されていること(ユビキチンホメオスタシス)は、生命活動の維持に重要である。最近私達は、出芽酵母において細胞内のユビキチンレベルが、脱ユビキチン化酵素Doa4とそのインヒビターRfu1によって制御されているという新たな仕組みを発見した(Cell,2009)。しかし、ユビキチンのホメオスタシスを維持する機構は、未知の点が多く、また細胞内でユビキチンの動態や局在がどのように変化し、それが細胞にどのような影響を与えるかについても不明な点が多く、これらの点を解明することが研究の目標である。今年度は、まず出芽酵母を用いてUfd3(Doa1)の働きを調べた。Ufd3はユビキチン関連シャペロンであるAAA+ ATPase VCP/Cdc48のコファクターであるが、Ufd3の欠損変異株では細胞内のユビキチンが減少する。この欠損変異株をMG132処理すると、ユビキチンの減少が部分的ながら抑えられ、ufd3欠損ではユビキチンがプロテアーソームによって積極的に分解されることが示唆された。また哺乳類細胞を用いてミトコンドリアストレスによる彩響を調べた。哺乳類のParkin発現細胞ではミトコンドリアストレスによってミトコンドリアがユビキチン化される。そのユビキチン化ミトコンドリアに対してVCP/Cdc48が移行するが、疾患型のVCPではミトコンドリアへの移行が著しく抑えられることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ミトコンドリアストレスに関しての新たな発見に時間を取られ、Ufd3の欠損によりなぜユビキチンが減少するかについての解析がやや遅れた。Ufd3はエンドソームにも一部局在することから、ユビキチンの代謝は液胞系の分解が関与するのではないかと考えており、MG132処理の実験を考えつくのが遅かった。
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今後の研究の推進方策 |
ufd3の欠損でなぜユビキチンが減少するかについてさらに解析を進める。ポリユビキチンをコードする遺伝子UBI4とUFD3の2重変異株では温度感受性になるので、この株を利用してスクリーニングを行いたい。またミトコンドリアストレスに関しては、ユビキチンの動態変化をVCP/Cdc48の正常型と疾患型との関係を明らかにしたい。
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