研究領域 | 活性酸素のシグナル伝達機能 |
研究課題/領域番号 |
23117702
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
武藤 哲彦 東北大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (80343292)
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キーワード | 遺伝子 / 発現制御 / 免疫学 / Bach2 / 転写因子 |
研究概要 |
B細胞レセプターシグナルは分化・成熟や増殖および活性化応答を制御する。近年、活性酸素シグナルがBCRシグナル経路のセカンドメッセンジャーとして機能することが報告された。一方で、活性酸素シグナルが転写因子Bach2の活性を抑制することを私たちは見いだしている。Bach2はB細胞から形質細胞への分化を抑制する。従って、BCRシグナル経路は活性酸素シグナルを利用してBach2を制御し、B細胞から形質細胞への分化を促進する可能性がある。本研究ではBach2がB細胞における活性酸素シグナルのセンサーであり、B細胞の活性化を調節するエフェクターとして機能する可能性を検証する。 平成23年度初頭にBach2の制御系を解明する過程で、ヘムがBach2を抑制し、形質細胞分化を促進する機序を見いだした。そこで、リコンビナントBach2タンパク質を用いて活性酸素センサーとして機能するシステインの同定を試みると同時に、ヘム結合により感受性を変えるシステインの同定を試みた。システインへの化学修飾剤としてアクリルアミドの同位体を用いた。その後のMALDI-TOF MS解析では、Bach2の331番目のアミノ酸からC末端までの領域をサンプルとした。この領域に含まれる26のシステインのうち13を検出した。そのうち、ふたつのシステインでヘム存在下と非存在下でアクリルアミド修飾に差がみられ、これらが反応性を示すシステインである可能性がある。動的光散乱測定により、ヘムが結合するとBach2は粒子径が小さくなるという結果を得た。すなわち、ヘムが結合するとBach2は立体構造が変化してタンパク質として小さくなることを見いだした。以上の結果から、Bach2の活性制御メカニズムとして、活性酸素シグナル以外にもヘムによる制御という新規の機序を明らかにし、タンパク質レベルでの変化を伴うことを解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リコンビナントタンパク質を用いたBach2上のセンサーシステインを同定するための検証実験系を確立しつつある。ここで、我々は新規にヘムがBach2を制御する機序を見いだし、解析をさらに発展させることができている。一方で、マウス個体レベルでの評価系に取り組み、幾つかの系統を得ているが、必要な系統を全て得ていないことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
マウス個体レベルでの解析は、一部改善したトランスジーンを作成中であり、急ぎマウス作成に取りかかる予定である。リコンビナントタンパク質を利用した実験は、おおむね順調に進めていることから、当初の計画通りBach2の複合体精製と構成因子の同定を試みる。そこでは、活性酸素シグナルの影響を考慮すると同時に、ヘム存在下と非存在下での構成因子の違いを検討する、もしくは、ヘム結合できる野生型Bach2とヘム結合できない変異型Bach2で構成因子の違いを検討する計画を発展課題として取り組む予定である。
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