公募研究
ヒトのニューログロビン(Ngb)には、酸化ストレスに伴う神経細胞死を防ぐ働きがある。我々は以前、ヒトNgbの新規機能の探索を行い、ヒトNgbがヘテロ三量体G蛋白質のαサブユニット(Gαi/o)に結合しGDP解離抑制因子(GDI)として機能することを見い出した。本研究では、まずGαi/oが酸化ストレス下で修飾され活性化されるという過去の知見に基づき、修飾後のGαi/oを用いて機能解析を行った結果、ヒトNgbは酸化修飾を受けたGαi/oにも結合しGDIとして働きGαi/oの活性化を抑えることが明らかになった。また、cAMPアナログを使った細胞実験から、cAMPアゴニストを加えると酸化ストレスに伴う細胞死が抑えられること、cAMPアンタゴニストを加えるとNgbの細胞保護効果が低下することが明らかになり、cAMP濃度の増加が酸化ストレスに対する細胞保護に密接に関わっていることが判明した。さらに、ヒトNgbを細胞内に過剰発現させ酸化ストレスを与えると、ヒトNgbを発現させずに酸化ストレスを与えた場合と比べ、cAMPの細胞内濃度が増加していることを実証し、ヒトNgbはGαi/oに対するGDIとして働きGαi/oの活性化を抑えることにより細胞内cAMP濃度の低下を抑え神経細胞を保護していることを明らかにした。また、ヒトNgbの軸配位子の変異体を作製し解析することにより、Ngbは酸化ストレス応答性のセンサー蛋白質として働き、細胞保護していることを実証することにも成功した。さらに、ゼブラフィッシュNgbは、魚類細胞に対し、培地中から細胞質内に移行できる「細胞膜透過能」を持つことも見い出した。ゼブラフィッシュNgbは酸化ストレスに対する神経細胞保護能を持たないことから未知の生理機能を持っているものと考えられる。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Biochim. Biophys. Acta
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http:// dx.doi.org/10.1016/j.bbapap.2013.02.021
J. Biol. Chem.
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実験医学増刊号「活性酸素・ガス状分子による恒常性制御と疾患」
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