公募研究
植物は病原菌の攻撃に応答して急激な活性酸素種の生成を引き起こす。この反応はROSバーストと呼ばれ、植物の抵抗反応や過敏感細胞死において重要な役割を果たす。ROSバーストは、主に細胞膜に存在するNADPHオキシダーゼであるRBOHに依存して引き起こされる。ジャガイモ葉組織においては、StRBOHCがジャガイモ葉組織での病害応答に関与することが示されている。葉組織におけるROSバーストに至るまでのシグナル伝達経路の解明は、植物の防御応答システムを明らかにする上で重要である。本研究では、StRBOHCのベンサミアナタバコにおけるオルソログであるNbRBOHBの転写誘導機構を探ることにより、2つのMAPキナーゼカスケード(MEK2-SIPK,MEK1-NTF6)がROSバーストを制御する機構を明らかにすることを目的とする。平成23年度は、NbRBOHBプロモーターのMEK2-SIPKに応答するシス配列を決定した。これまでに、StRBOHCプロモーターの転写因子としてW-box配列を含む推定シス配列の11bpを同定した。NbRBOHBプロモーターも、StRBOHCプロモーターと同じ11bpの推定シス配列を保持しており、この配列がシス配列であると想定された。この推定シス配列を3タンデムに連結したプロモーターは、PAMPであるINF1や、ジャガイモ疫病菌のエフェクターであるAvr3aとRタンパク質であるR3aの発現により著しく誘導された。一方、細胞死を誘導しないPAMPであるflg22ではほとんど誘導されなかった。さらに、これらのプロモーター活性は、SIPKをサイレンシングすることで著しく抑制された。これらの結果は、NbRBOHBプロモーターが、11bpのシス配列を介してINF1やAvr3a/R3aにより制御され、いずれもSIPKに依存するものと考えられた。MEK1-NTF6に対するシス配列は、他の領域に存在することを示唆している。
2: おおむね順調に進展している
平成23年度は、NbRBOHBプロモーターのMEK2-SIPKに応答するシス配列を決定することができた。この推定シス配列を3タンデムに連結したプロモーターは、PAMPであるINF1や、ジャガイモ疫病菌のエフェクターであるAvr3aとRタンパク質であるR3aの発現により著しく誘導され、SIPKをサイレンシングすることで抑制された。
StRBOHCプロモーターのシス配列に結合する2つのWRKY型転写因子であるNRI1およびNRI2をYeast one-hybrid法で単離し、NbRBOHBの転写に及ぼす影響を調べた結果、これらのWRKY型転写因子は、いずれもNbRBOHプロモーターを制御しないことが示された。最近になって、ジャガイモ、ベンサミアナタバコの全ゲノム配列が解読された。そこで、来年度は、NbRBOHBのW-box配列を含む推定シス配列に対応するWRKY型転写因子を探索し、特定することを主な目的とする。ベンサミアナタバコのゲノム配列情報を基に、NRI1およびNRI2に類似したWRKY型転写因子を単離し、TRVサイレンシングベクターに構築する。このウイルスベクターを用いてベンサミアナタバコの様々なWRKY型転写因子をサイレンシングし、MEK2^<DD>誘導によるNbRBOHBの遺伝子発現が抑制される植物を得る。この手法によって、NbRBOHBおよびStRBOHCの転写に関与するWRKY型転写因子を同定する予定である。
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Molecular Plant-Microbe Interactions
巻: (in press)
10.1094/MPMI-02-12-0036-R