まず最初に、活性ジスルフィド群を用いた酸化感受性定量化の手法を発展させた。即ち、ショウジョウバエの4つのTRPAチャネルホモログの酸化感受性を定量したところ、TRPA1が高い酸化感受性を示し、高O2に対しても反応を示すことが明らかになった。また、知覚神経におけるTRPA1とTRPV1のシステインを介したプロスタグランジンJ2による活性化の意義を検討したところ、それぞれのKOマウスにおける炎症性疼痛が抑制されていることが示された。このTRPA1とTRPV1の痛みに対する関与は、慢性化において重要であることもわかった。さらに、TRPA1がtransnitrosylation化合物により、高感度かつ選択的活性化されることが示された。この反応においては、transnitrosylation化合物が有するベンゼン環がTRPA1タンパク質に一旦結合し、transnitrosylation化官能基でのニトロシル化が進行することがわかった。 システイン酸化を介さずH2O2により活性化されるTRPM2の好中球浸潤における役割も明らかになった。特に、好中球が血管に浸潤を開始する過程で、TRPM2を介したCa2+流入が接着を安定化することが示唆された。また、TRPM2は炎症を統合するInflammosomeの形成に枢要であることも示された。過去の知見と併せて考えると、TRPM2は炎症反応全般を増幅することが考えられる。
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