研究概要 |
植物は多種の活性酸素種(ROS)生成酵素Nox/Rbohを持ち、積極的に生成したROSを形態形成・生体防御応答・環境ストレス応答など多様な局面においてシグナル分子として活用していることが明らかになりつつある。AtRbohDまたはAtRbohFを発現させた細胞に,プロテインキナーゼ阻害剤を前処理すると,カルシウムイオンによるROS生成が抑制された.一方,カルシウムイオン結合モチーフにアミノ酸置換変異を導入し,カルシウムイオンによる活性化を阻害しても,野生型と同程度のリン酸化によるROS生成が観察された.すなわちAtRbohD,AtRbohFのカルシウムイオンによる活性化はリン酸化を必要とするが,リン酸化による活性化はカルシウムイオン結合を必要としないことが明らかとなった。こうした結果に基づいてAtRbohのリン酸化がROSとカルシウムイオンによるフィードバック制御の引き金として機能するとのシグナルネットワークモデルを提唱した。 HEK293T細胞を用いた異種発現系により,全てのAtRbohのROS生成活性能と活性化制御機構を比較解析した。AtRboh間の互換性の検証を行った。具体的には,根毛の先端成長に関わるAtRbohC遺伝子の機能欠損変異体に,根毛で発現していないAtRboh遺伝子を異所発現させ,atrbohC突然変異体の表現型を相補できるかどうかを調べた。またAtRbohF,DのN末端制御領域と特異的に結合し、ROS生成活性を正負に制御する新規タンパク質を複数種発見し、機能解析を進めた。AtRbohH,Jは、花粉に局在し、積極的ROS生成が生殖・受精の制御に重要な役割を持つことを発見した。他の分子種についても、個体における局在部位や、突然変異体を用いた生理機能や互換性の解析を進めた。
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